パリ五輪後に代表引退を検討も、宇都宮開催のアジアカップ予選でカムバックを決めた比江島慎「五輪を払拭できるプレーをしたい」
合宿前にホーバスHCと電話でやり取り
11月13日、味の素ナショナルトレーニングセンターで『FIBA アジアカップ 2025予選 Window2』に挑む男子日本代表のメディア向け公開練習が行われ、メンバー最年長の比江島慎が取材に応じた。 今夏のパリ五輪を最後に日本代表のユニフォームを脱ぐつもりでいた。しかしそれを翻意させた。比江島はその理由を、代表招集の打診を主とするトム・ホーバスヘッドコーチとの電話の内容を話す中で明かした。 「パリは個人的に不完全燃焼で終わってしまいましたし、次のウインドウが宇都宮で開催されるということもあって『代表チームに参加したい』と伝えました。その先の、(2027年の)ワールドカップや(2028年の)オリンピックまでは考えていないというところも話したのですが、それでもいいと言っていただきました」 パリ五輪で日本代表が戦った3試合において、比江島の平均出場時間は約13分に留まった。そしてコートに立ったこれらの時間で、比江島が彼らしいプレーを十二分に発揮できたかと言えばノーだ。比江島は自分のパフォーマンスを含め、日本代表がパリ五輪で得た課題について次のように話した。 「トムさんのバスケはポイントガード中心だけど、僕を含めたボールハンドラーが彼らを助ける動きができなかったし、相手のレベルが上ったこともあってワールドカップと比べるとカッティングがなかなかうまくいきませんでした。ディフェンスは良い部分もあったので、そこは継続していければ良いと思います」
後進への思い「僕みたいな選手が育ってほしい」
比江島が代表活動にピリオドを打とうとした理由はいくつかある。この日、比江島が多く言葉を割いたのは、後進への影響だ。「僕がこのまま代表を続けて若手や次の世代の選手が経験を積めないよりも、どんどん経験させて、僕らを超えていってもらったほうが良いんじゃないかと考えたので。年齢(34歳)のことや身体の具合ももちろんありますけど」 比江島は青山学院大4年時の2012年に日本代表に初選出され、以来10年以上日本代表の主軸を務めてきた。若くからチャンスを与えられてきた彼だからこそ言える言葉だろう。少し照れくさそうに言った「僕みたいな…っていうのもあれですけど、そういう選手が育ってくれたらいいなと思います」という言葉も同様だ。 すでに多数のメディアが報じているとおり、比江島はホーバスヘッドコーチより中学校以来となる主将に任命された。合宿初日から「声が小さい」「指示の言葉が簡潔でない」など多数のクレームを受けているとぼやき、報道陣を笑わせたが、自分らしいリーダーシップを表現するべく前向きに取り組んでいる様子がうかがえた。 「ここでしっかり連勝すればアジアカップ本戦が決まるので、まずはそこをしっかりつかみとるというところが一つ。そして、ワールドカップやオリンピックに向けての第一歩となる初陣になるので、そういったところも意識しながらやっていきたいです」 Window2の抱負をこのように語った比江島は、自身の進退にからめてこうも言った。「協会やトムさんの意向もあるでしょうが、僕自身はこのウィンドウで代表活動を最後にするつもりです。もちろん結果は出さなきゃいけないですけど、悔いが残らないように、不完全燃焼だったオリンピックを払拭できるプレーができればいいなと思います」
バスケット・カウント編集部