車が乗っ取られる?ネットにつながる「コネクテッドカー」に迫る脅威 サイバー空間と現実世界にまたがる対策が必要
「CASE」と呼ばれる技術革新で自動車が大きく変化しつつある。Connected(コネクテッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)が相互に関係しながら進化し、従来の自動車の概念そのものが変わろうとしているのだ。 【図で見る】サイバー空間と現実世界にまたがるセキュリティ対策が必要 ■「CASE」で自動車にサイバーセキュリティ問題が浮上 自動運転技術の進化や、インターネットと常時接続しICT端末としての機能を持つコネクテッドカーの普及は、ビジネスの拡大や社会課題の解決に寄与するものと期待が高まっているが、一方で新たな課題も生まれている。最たるものがサイバーセキュリティである。
もし走行中に走る・曲がる・止まるという自動車の制御を悪意のある第三者に乗っ取られたらと考えれば、その恐ろしさがわかるだろう。しかもモノが空間を移動する自動車のセキュリティは、サイバー空間内で完結する従来のセキュリティとは異なる要素がある。 産業技術総合研究所で、サイバーフィジカルセキュリティ研究センターの研究センター長を務める松本勉氏はこう話す。 「外部との通信機能を持つICT化した自動車は当然、ネットワーク化されたコンピューターにおけるセキュリティ課題と同じ問題に直面します。加えて自動運転では外界の情報をセンサーで計測し、ライブでデータ化して操縦を行いますが、サイバーフィジカル攻撃を受けて外界の姿を歪められ、センサーが正しく計測できないと、正しい判断と運転ができなくなります」
要は頭がしっかりしていても、見るところを歪められるとおかしな結果が起こりうるということだ。こうしたフィジカル(現実世界)からサイバー空間への伝達がねじ曲げられてしまう問題を計測セキュリティという。 「ハンドルやアクセル、ブレーキといった自動車制御の部分でも動かそうと意図した通りに動かない、モーターが正しく回らないといった問題が起こり得ます。これはサイバーからフィジカルへの伝達がねじ曲げられてうまくいかなくなるケースで、両方のパターンがあるわけです。このサイバーとフィジカルの境目が、自動車に限らずモノがインテリジェントになって自律的に動くようになるとき、セキュリティ問題として浮上してきます」