車が乗っ取られる?ネットにつながる「コネクテッドカー」に迫る脅威 サイバー空間と現実世界にまたがる対策が必要
松本氏のいるサイバーフィジカルセキュリティ研究センターでは、こうしたサイバー空間と現実世界が高度に融合した社会が直面、また今後起こる可能性のあるセキュリティ課題を解決する技術の研究を行っている。 ■実体のあるモノである自動車ならではの注意点 コネクテッドカーは位置情報を人工衛星から得るGPSや、車両同士の無線通信で周囲の情報を入手し安全運転支援を行う車車間通信、4Gや5Gでクラウドとつながるなど、さまざまな通信接続を行っている。
コネクテッドカーのセキュリティとして懸念が大きいのは、ネットワークを通じて外部から侵入されることである。例えば、PC化する自動車のコンピューターは頻繁にソフトウェアが更新されるが、この更新時を狙って古いソフトウェアに書き戻されたり、悪意のあるソフトウェアに書き換えられたりする可能性が指摘されている。 また、どこをどういうルートで移動したかやそのときの車内状況の記録など、機密性のある情報の流出や、逆に事故を起こした際に証拠となる情報を偽のデータに書き換えられたりする被害も考えられる。
しかも実体のあるモノである自動車は、ネットワーク経由だけでなく自動車のコンピューターに何らかの方法で直接、マルウェアを仕込まれたり、情報を盗まれたりする可能性もあるのが厄介な点である。自動運転に関しては、前述したようにセンサーの正しい計測を歪めるような攻撃が懸念されている。 「人間の運転手でも激しい雨で前方がよく見えなかったり、まぶしくて目がくらんだりしてしまうことがあります。自動運転のセンサーに対してもそれと同じような状況を意図的につくり出せば攻撃であり、セキュリティの対象になってきます。
例えば、センサーや見ている対象物に変な光や電波を当てて、存在する人や車を見えなくしたり、逆に幻影が見えるようにしたりして視界を狂わせ、最終的にハンドルやアクセル、ブレーキの操作を誤らせてしまうような攻撃が想定されています」 もし攻撃者がそのような方法で自動車をコントロールできれば、トンネル内で急ブレーキをかけて後続車に追突させ、人身事故や交通渋滞を引き起こし、交通や物流を麻痺させるといったテロ行為も可能になってしまう。