災害時に避難する場所は「避難所」だけじゃない――コロナ禍の新常識「分散避難」とは?
災害時に避難する場所は「避難所」だけじゃない――コロナ禍の新常識「分散避難」とは?
コロナ禍での災害時、過密状態を避けるために昨年より推奨されているのが、避難所以外の安全な場所へと避難する「分散避難」です。ところが各種の防災知識調査では、分散避難への理解が十分に進んでいないことが明らかになっています。実際に昨年の九州豪雨災害の際には、満員の避難所が相次ぐという課題も浮き彫りになりました。そもそも分散避難とはどのような避難方法で、どう避難すれば安全なのでしょうか。防災士として精力的に講演活動などに取り組む防災士の小川光一さんにお話を伺いました。(Yahoo!ニュース Voice)
多くの避難所が収容人数を制限。たらい回しになる避難者も
――新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、各地の避難所はどのような課題を抱えているのでしょう? 避難所において一番の課題となってきたのが、ソーシャルディスタンスの確保です。アルコール消毒やパーティションによる仕切りを徹底したとしても、従来通りの収容人数では、どうしても過密状態は避けられません。そこで多くの避難所が、受け入れ人数を1/2程度まで削減することで感染のリスクを抑えているのが現状です。 ただしそうすると、避難を希望する人に対して、避難所のキャパシティが追いつかないという問題がでてきます。実際に昨年、大きな水害に見舞われた九州地域では、避難所の数自体は増えているにも関わらず、多くの避難所が相次いで満員になりました。長崎県のある街では、20箇所の避難所のうち9箇所が満員になり、雨風が吹き荒れるなか避難所をたらい回しにされる方も多かったと聞きます。 一方で、「感染が怖いから、避難所へ行きたくない」という方もいらっしゃいます。けれど、それは非常に危険な考え方です。特に風水害においては、早期避難がなによりも大事になります。コロナに罹らなかったとしても、災害で命を落としてしまったら元も子もありません。
災害状況によって避難場所を選択。そのメリットとデメリットは?
――コロナ禍のなか、安全を確保するためには、どうしたらいいのでしょう? 避難所の混雑を緩和しながら身の安全を確保するために推奨されているのが、避難所以外の安全な場所へと避難する「分散避難」です。 「分散避難」には、大きく3つの選択肢があります。まずは「自宅滞留」。高台にある頑丈な建物にお住まいの方は、自宅に留まる方が安全なケースも少なくありません。ただ避難所に比べると水や食料などの救援物資が届きにくい可能性があるので、しっかりと物資を備蓄しておく必要があります。 2つめの選択肢は「車中泊」です。車で安全な場所まで避難し、そこで過ごそうという避難方法です。感染リスクも抑えられますし、避難所に比べると心理的なストレスも軽減できる。しかし、道路が冠水したり陥没したりしてしまった場合、車での移動は困難です。無理をすれば交通事故などの二次災害にも繋がってしまう。そのため「車中泊」を選択する場合も、常に早めの避難が重要になります。 なお、車中泊の場合、エコノミークラス症候群のリスクがあります。定期的に軽いストレッチを行うことを心がけるほか、車中泊マットや着圧ソックスを用意しておくこともおすすめです。 最後の選択肢は「高台など安全な場所に立っている友人知人宅への避難」です。自宅滞留も車中泊も難しいという人にとっては、有力な選択肢となるでしょう。避難所に比べると、避難の心理的なハードルが低いというメリットもあります。とはいえ、何かが起きてから急に押しかけたのでは混乱の元ですので、普段から「災害が起きたら避難させてね」とお願いしておくとスムーズに避難できると思います。避難所への避難はもちろん、前述した3つの場所に避難することが難しい場合は、安全なホテルへの宿泊という方法も選択肢としてあります。