災害時に避難する場所は「避難所」だけじゃない――コロナ禍の新常識「分散避難」とは?
正しい情報に基づき、臨機応変に避難先を選ぶ
――分散避難において、気をつけるべきことはありますか? まず大切なのは、避難所も含めて複数の選択肢をあらかじめ確保しておき、状況に合わせて臨機応変に行動することです。的確な判断を下すためには、事前の情報収集も欠かせません。避難所のキャパシティはどれくらいなのか。自宅の立地や耐久性はどうなのか。途中で混雑しそうな道はないか。備蓄はどれくらい用意しておけばいいのか。常日頃から最悪の事態を想定し、それに備えておくことが重要になります。 ――分散避難に備えて、どのような物資をどのくらい準備しておくべきでしょうか? 水や食料については、一般的には3日分と言われていますが、これを絶対視するのではなく、まずはできる範囲での備蓄で構わないと思います。車中泊を選ぶ場合は、水や食料をどれくらい積めるのかを把握しておくことも大切です。あとは忘れてはならないのが、マスクや消毒液。普段使いとは別に、災害袋などに入れて備蓄しておくのがオススメです。これらに加えて、電力確保のため発電機や、情報収集のためのラジオなども準備しておけるとなお良いと思います。
コロナ禍での災害対応を、次世代への教訓とするために
――感染拡大防止という観点からは、どのような点に気をつけて分散避難を行うべきでしょうか? まずご自身が感染者や濃厚接触者である場合、人が集まる避難所への避難は非常に危険です。自宅滞留か車中泊が有力な選択肢になるでしょう。もしいずれも難しい場合には、安全な場所にあるホテルなどに宿泊するのもいいと思います。 ご家族で自宅滞留を選んだ場合は、家庭内感染にも気をつけなければなりません。おすすめなのは、パーティションを用意しておいて、自宅のなかにさらに小さな「避難スペース」をつくれるように備えておくことです。それだけでも、随分と感染のリスクを抑えられるはずです。 ――そのほか、コロナ禍における災害に備えて、私たちに今できることはありますか? 個々人がしっかり防災意識を持つことが何よりも大切だと思います。現在は、避難訓練などにも参加しづらく、地域全体の防災力が低下している状況です。だからこそ自治体に任せきりになるのではなく、自分たちで主体的に防災について考える機会を設けてほしい。家族や友人と防災について話をしておくだけで随分と違うと思いますし、オンラインで防災イベントに参加することもできるはずです。 今回のコロナ禍をきかっけに、感染症対策を踏まえた「新しい防災」の形をつくり、それをしっかりと次世代にも継承していくことも、今を生きる私たちに求められていることでしょう。10年後、20年後にまた別のパンデミックが起きる可能性も十分にあります。そういった未来に向けて、しっかりと教訓を残せるよう、みなさま一人ひとりが想像力を発揮してもらえたら幸いです。 ----- 小川光一 日本防災士機構認定防災士。作家。映画監督。 防災をテーマにした映画や書籍を発表。日本唯一の「映画を作ることができる防災専門家」として、全47都道府県にて講演。国内外を問わず、多数のNPO法人などに所属して活動中。 文:福地 敦 制作協力:ドットライフ