女性の更年期問題は、いまだに仕事の場でタブー視されている?理解が進まない理由とは?
― 企業でも女性のウェルネスへの関心が高まっているが、更年期問題に関しては対応が遅れている。それはなぜなのだろうか。 フランスでは、月経や母性に関する積極的な社会運動が実を結び、生理用品に対する付加価値税引き下げ、あるいは子宮内膜症に関しては医学的知識の普及や職場における配慮が実現しています。一方、更年期の問題はここ2~3年でようやく取り上げられるようになったものの、状況が改善されたとは言えません。職場ではいまだにタブー視されており、CSR(企業の社会的責任)方針や職場環境の改善に関する議論にもなかなか登場しない。当事者の女性が自らこの話題を出すことはありません。多くの場合、差別されたり別枠扱いになってしまうからです。だから何も言えなくなってしまうのです。 ― ほてり、うつ、睡眠障害、集中力低下、疲労感などの更年期症状は仕事にどれだけ影響を与えているのだろうか。 10月18日の世界メノポーズデー(更年期の日)の際、発表された調査によると、回答者の82%が更年期症状が理由で辞職を考えた経験のあることが明らかになりました。このうち、12%が実際に辞職しています。また、回答した女性の多数(90%)が、仕事中に更年期症状が出て、早退したり休まざるをえなかった経験がありました。しかも休む本当の理由を伝えられなかった女性が圧倒的多数です。 ― 閉経したら「女として終わり」と捉えがちな集団的想像力や会社の同僚の意識をどうしたら変えていくことができるだろうか? イギリスでは人事責任者が10年以上前からこの問題に取り組んでいます。閉経したら女として終わりなんて偏見に満ちた考えはとんでもないことです。フランスのニュースチャンネルCNEWSの論説委員が、エコロジスト政治家のサンドリーヌ・ルソーを、仏大統領予備選の際、「更年期のグレタ・トゥーンベリ」と揶揄したことも同様の発想です。アングロサクソン諸国では多くの女性が差別と戦っているものの、それでも偏見はなくなりません。フランスの労働審判所で争われたハラスメントや差別の事例をみると、出産が上位に来ますが、同時に更年期症状と生産性の低下を結びつける考えも根強いです。更年期と出産期の女性は、人生の中でもとりわけ弱い立場にあります。50歳を過ぎた女性は、職場から辞めろと事あるごとに暗に言われているように感じています。 ― この時期を、差別することなく配慮するにはどうすればいいだろうか。 物事が進展するには影響力のある人たちの発言、ロールモデルの存在、具体的な施策が必要です。がんのときもそうでした。ビジネス界の著名人たちが発言したことが大きく影響して、がん患者が働く環境が整っていったのです。女性ゲストを招いて更年期について話し合うオード・アヨのポッドキャスト、『La Fin des règles(原題訳:生理の終わり)』も同様の効果をもたらしています。登場するゲストたちはやや躊躇しながら話している印象ですが。物事を明らかにし、タブーなしに冷静に記録し続けるフェミニスト思考のおかげで変化は少しずつ起きています。しかしながら、人々の見方を大きく変えるためには、強くて象徴的な権力を持つ公人がこの問題を取り上げることが重要です。 ― 女性への支援を充実させるためにはどのような措置が必要だろうか。 更年期の問題に取り組むための環境はいまや整っています。より柔軟な勤務体制や休暇、職場や休憩スペースの空調など、ちょっとした配慮で大きな効果が得られるのです。さらに重要なのは企業内で50代の女性をもっと活用することです。閉経期は仕事上の転機と重なります。成長、異動、研修の機会を与え、会社がこの年代の女性に期待していることがわかれば、女性たちも人生のターニングポイントをリラックスして迎えられます。更年期を迎えた後も女性はまだ15年から20年働くのです。この時期の女性は子どもも大きくなっていて時間的に余裕があります。キャリアアップは20代や30代だけのものではないはずです。 ― 医学的見地からはどうだろう。 症状についてのもっと詳しい知識は職場での意識を変えるのに役立つでしょう。ホルモン治療に関して非常に否定的な風潮があるために多くの女性がホルモン治療を諦め、結果として骨粗鬆症、骨折のおそれ、心臓疾患に悩まされています。たとえロビイストたちに逆らってでも、最新の医学知識を普及させるべきです。一部の婦人科医を含め、多くの医師はいまだに更年期についてよく知りません。女性が病院に行ってもホルモン検査せずに抗うつ剤を処方されることが多いのです。医療界そのものが遅れています。
text : Céline Cabourg (madame.lefigaro.fr)