授業料値上げで限界の東大生 「大学はお金がないと行けない場所なのか?」
値上げの元凶は国の支出削減
東大生は、裕福な世帯の出身者が多いのは事実です。今回、20年間我慢してきた授業料値上げに踏み切った背景には、「お金に困っている学生は少ないから、大きな抵抗は起きないだろう」と高をくくっていた節があります。一方で、東大生の少なくとも7人に1人は、家計が苦しい世帯の学生です。こうした学生やその友人たちが、値上げ反対の声を上げたのは自然なことだと思います。 ただ、東大だけを責めるのは酷だと私は思います。東大は、企業などから多くのお金を集めているとはいえ、世界と競い合うために研究施設などに莫大な支出をしています。 電気を大量に使う研究設備も多いため、節約には限界があります。本来は研究・教育を停滞させないために、国が補助金を増やすなどしてカバーすべきところです。個人的には、数十兆円とされる防衛費の増額分のごく一部でも大学向け予算に回していれば、授業料の値上げなどしなくても教育・研究環境の充実を図れるのに、と思ってしまいます。 私が大学に通っていた1990年代前半、大学進学率は25%程度でした。現在は58%まで上昇し、18歳の半分以上が4年制大学に進む時代です。これだけ大学生活を経験した人が増えたのに、国に教育予算の増額を求め、家計の学費負担を減らすよう求める運動は盛り上がりません。「教育費を出すのは親の役割」という意識が、日本では依然として強いようです。 しかし、世界に目を向けると、先進国の中でも日本は、国が大学や学生に配分する予算がかなり少ないのが現状です。その分、各国と比べて家計の教育費負担が大きくなっています。石油などの天然資源が少ない日本では、人こそが最大の資源と長く言われてきました。国民はもっと国の教育予算の「出し渋り」に怒って、返済不要の給付型奨学金や大学への補助金などを増やすよう、政府に、政治家に訴えていくべき時期にきていると思います。
朝日新聞Think キャンパス