刃物で刺され、つぶれた肺で呼吸もできないなか、助けを求めて叫んだ・・・息子を奪われた家族を襲った『誹謗中傷の二次被害』立ち向かう力はどこからー”それはただただ支援です”
直後だけでなく、被害者遺族を苦しめ続ける現実
(堤敏さん)「ここ数年は、スマートフォンやビデオカメラを片手に動画撮影しながらやってくるYouTuberも現れました。意外だったのが、同じ町内で同じ住宅地に暮らす人からの苦情でした。この町でこんな事件を起こされて迷惑してるよ、治安が悪い街と思われたらどうしてくれるんだ、そんな苦情。またマスコミが毎日来てうるさいんだよ。何とかしろという苦情」 他にも、通っていた学校からの苦情や、献花された花に対する苦情、情報提供を求めるビラに対する苦情・・・数えきれない二次被害が、事件直後だけでなく、長年にわたり家族を苦しめたといいます。 (堤敏さん)「家内は警察に言ってくださいといって対応したらしいんですけども、まるで私たちが犯罪者のようです。さらに被害者遺族を傷つけて、被害者を2度も3度も殺すのと同じです。」
「被害者遺族が最初の一歩を踏み出す、それはものすごいエネルギーが必要なんです」
(堤敏さん)「子どものいのちを奪われるのはつらいし、昔の話にならない。ずっと被害の中にいる。」 事件の後、堤さん夫婦は大きな病気をして早期リタイアせざるを得ない状況になったといいます。夜一人で歩くのが怖くなったり、電気を消して寝られなくなったり、当たり前だった日常の生活が一変しました。 (堤敏さん)「被害者、遺族が完全に立ち直れるのか、それは私にもわかりません。私自身も立ち上がったと思っていないからです。被害者や遺族が前を向く、立ち上がる、最初の一歩を踏み出す、それはものすごいエネルギーを必要として本当にしんどいことなんです。そこに踏み出すためには、”踏み出すための支援”も必要です。苦しみや悲しみ、精神的に打ちのめされて砕かれて、抵抗する力をどこから持ってくるかー。 ”それはただただ支援です。” 私は、多くの方から支援をいただいて、こうしています。警察のみなさん、被害者支援室の方々、多くの人に助けていただいた。わたしたちは多くの人に支えられたが、全く声もあげられない、仕事も出来なくなって経済的にも困窮している遺族や被害者も沢山います。そんな被害者のためにも、『支援は絶対に必要です』。」 堤敏さんの話し方は、淡々としながらも、まるできのうのことのように当時を思い出しているようで、その言葉や目には力がこもっていました。静まった会場に響いたことば、涙する人の姿もありました。