なぜ横浜DeNAは阪神に逆転サヨナラ劇で3連勝し4位浮上できたのか…三浦”番長流”「肉を切らせて骨を断つ」勝利リスクマネジメント
三浦監督は大田を称えた。 「期待に応えてくれた。試合に出ても出なくてもベンチを盛り上げて戦ってくれている。あの走塁も(タッチを)かいくぐって素晴らしいスライディング。本当によくやってくれています」 初回に4点を先制したものの追加点が奪えず流れは良くなかった。 5回には、牧のまさかのタイムリーエラーが絡んで2点を失い、6回にも二死二塁から代打ロハスにセンター前タイムリーを打たれて1点差。そして7回二死から3番手のエスコバーが154キロの内角高めのストレートを佐藤にライトスタンドの上段にまで運ばれる同点の14号ソロ。佐藤には、今季ハマスタで打率.429、4本塁打とカモにされている。昨年4月には「鳩サブレ―」の看板を超えていく衝撃の場外弾を浴びた。 4-4で迎えた8回には、伊勢が先頭の糸原を四球で歩かせ、ワイルドピッチで難なく二塁へ進めてしまった。山本にきっちりとバントで三塁へ送られて一死三塁から梅野の二ゴロの間に勝ち越しを許した。これもミス絡みである。 だが、三浦監督は、まったく悲観していなかった。佐藤の同点ソロも、この勝ち越し点も「1点を失った」のではなく「1点に留めた」ことを評価したのである。 この回、なおも二死一、二塁とピンチが広がったが、代わった入江が島田をセンターフライに打ち取っていた。 「その次、その次をなんとか踏ん張っていたから9回につながった。追いつかれ、追い越された後も1点に踏ん張った」 佐藤にしても走者を置いた場面では一発を含む長打は打たれていない。初回は一死一、二塁から先発の東が三塁ファウルフライに打ち取り、3回も二死一塁から裏をかいた外角のストレートで見逃しの三振。5回も一死一、三塁から犠飛は許したが、一発は封じ込んで最小失点に食い止めた。 「1人の打者だけでなく、打線としてどう抑えるか。佐藤には(同点本塁打を)打たれたが、ランナーを溜めた場面ではなく、打線として抑えることできた。ポイントゲッターを良く攻めてくれたと思う」 三浦監督のマネジメントは、まさに“肉を切らせて骨を断つ“である。完璧を求めるのではなく、ミスや、ある程度の力負けは織り込んだ上で、いかに被害を最小限に食い止めるかを考える。一種のリスクマネジメントである。就任2年目の三浦監督が経験を元に新たに得た新境地ではないだろうか。 三浦監督は「先発の東も、立ち上がりに勇気をもって攻めた。牧のエラー? 彼にここまでどれだけ助けてもらっているか。牧も必死でなんとかしようとしている。そしてみんなでカバーだね」とポジティブに語った。 その“余裕”のあるリスクマネジメントがチームカラーにマッチして、この阪神3連戦はうまく機能した。 コンディション維持の工夫もあった。この日、試合前の炎天下のハマスタの人工芝は熱を持ち40度を超える異常事態となっていた。三浦監督は、屋外での打撃練習を取りやめて屋内での打撃練習に切り替えた。少しでも体力を温存させておこうという配慮である。 大田は「延長戦になると疲れちゃうので(9回サヨナラで)良かった」と冗談半分に語っていたが、30歳を超える“中堅プレーヤー“の大田、嶺井の2人がヒーローになったことと、暑さ対策は、無縁ではなかったのかもしれない。