スプツニ子!の新作個展が開催中@KOTARO NUKAGA(東京・天王洲)
東京・天王洲のKOTARO NUKAGAにて、マルチメディアアーティストで映像作家としても知られるスプツニ子!(Sputniko!)の展覧会「Can I Believe in a Fortunate Tomorrow? ー幸せな明日を信じてもよい?ー」が開催中。 テクノロジーを媒介とすることで社会に存在する二元論的な境界を顕在化・非領域化させる装置・機能・体験をデザインし、それによって、わたしたちの「アタリマエ」や「普通」に囚われた思考を解放させつつ、それらを芸術領域へと昇華させるスプツニ子!。 本展は、未発表の新作を含む3シリーズの作品によって構成。2009年のアルスエレクトロニカへの参加以降、メディアアート、テクノロジーの世界を、先陣をきって駆け抜けてきたアーティストであるスプツニ子!の仕事を現在進行形で示す展示となった。 まずは、イギリスの著名なデジタルアート・アワードのひとつであるルーメン・プライズにノミネートされた『Drone in Search for a Four-Leaf Clover』。群生するクローバーの上をドローンがゆっくりと飛行する映像をAIが解析し、「幸せの象徴」とされてきた四つ葉のクローバーを見つけ出すという映像作品だ。かつては人の目で地を這うようにして探してきた四つ葉のクローバー。テクノロジーにより、いとも簡単に見つけられる「幸せの象徴」は、果たして人々を幸せにするのだろうか? その「進歩」への違和感を問いかける。
『Can I Believe in a Fortunate Tomorrow?』は、太陽近くの雲が虹のように七色に帯びて見える「彩雲」という現象を、AIによってシミュレートした映像作品。見るものを幸せにする一方、ある種フェイク映像とも言えるAIシミュレーションによる「彩雲」には、テクノロジーが示す未来の両義性が暗示されている。 また『Tech Bro Debates Humanity』は、ふたつのモニターにさまざまな人類の課題について議論をしつづける2人の男性が映し出される。この2人はスプツニ子!の容姿や声音を生成AIモデルによって「白人男性」化し、さらにイーロン・マスクやピーター・ティールなどのいわゆる「Tech Bro」的思考を憑依させたアバターだという。語られる議論の内容も全てAIによって生成されたものだ。 最先端の技術を用いながらも、その技術と従属関係を結ぶことなく詩的かつ私的な振る舞いを見せるスプツニ子!。それによって、かつてわたしたちが夢見たテクノロジーとのプリミティブな共存という未来の現在位置を示すとともに、その再検討を促す展示だ。ぜひお見逃しなく。 Text:Akane Naniwa