「劇映画 孤独のグルメ」監督・共同脚本・主演の松重豊「ドラマの世界観守るため」奮闘
「劇映画 孤独のグルメ」は、テレビ東京系人気ドラマの映画化だ。主演の松重豊(61)が監督、共同脚本と縦横無尽の活躍をみせる。類似のグルメ作品も多数作られるなど影響力を誇るドラマだが、映画になった背景には人気だけではなく、意外な理由があった。 【写真】井之頭五郎の衣装で監督を務めた松重豊 ドラマ「孤独のグルメ」は、人気漫画を原作に平成24年から放送が始まった。 輸入雑貨商、井之頭五郎(松重)が、仕事の合間に「腹が、減った」と立ち寄った飲食店で食事をする姿を淡々と描くシンプルな内容だ。 松重は「およそドラマチックなものは何もない。でも、長年ドラマ制作の現場に関わってドラマチックなものを要求されることに閉口していたところもあった。だから、ドキュメンタリーなのかドラマなのか、ノンフィクションなのかフィクションなのか分からないものをやろうという考えで始めました」と明かす。 実際、ドラマではなくバラエティー番組の制作班が担当した。これが、令和4年までにシリーズ10作を数えるほどの人気を獲得。昨年もスペシャル版が、テレ東の大みそかの夜を飾った。 今回、満を持しての映画化といいたいが、それだけではない事情もあるようだ。 「制作現場の人材流出が止まらないんですよ」。12年も続いたドラマだが、このままでは世界観が守れなくなる。松重は危機感を抱いた。 「気がつけば日本のエンタメは、韓国や台湾に置いてけぼりをくっている。今や配信の世界のほうがテレビより経済事情がよいともいわれる。これは、僕らの世代が次につなげるものを作れなかったせいでもある。後悔がある」 幸い「孤独のグルメ」は、アジアでも大好評。松重はこの人気を利用し、「アジア標準レベルのコンテンツを作ることが、制作陣にとって次に向けたステップになるのでは」と映画化を思い立った。そして松重は、「パラサイト 半地下の家族」で米アカデミー賞を獲得した韓国のポン・ジュノに監督を頼んだ。 「『無理だろう』とか『できないんじゃないか』と尻込みせず、やってみなきゃ分からないのだということを、若い人たちに伝えたかった」