「劇映画 孤独のグルメ」監督・共同脚本・主演の松重豊「ドラマの世界観守るため」奮闘
あいにく都合が合わず、松重自身が監督に。さらに2年をかけて脚本を練り、キャスティングから仕上げに至るまでを手掛けた。
「独裁といえば独裁。思ったような結果が出なかったら、潔く井之頭五郎役を降りますよ」と覚悟のほどを語るが、おなじみのドラマを独自の世界観をもった「劇映画」に生まれ変わらせた。
五郎は、かつての恋人の娘に頼まれ、あるスープを探す〝孤独ではない〟グルメの冒険に飛び出す。映画は仏パリから始まり、東京の路地で撮った4分にわたる長回しのエンドロールに収斂される。見事な構成により、五郎という人間とこのドラマの本質を的確に描く。松重が語る。
「五郎は自覚的に自分が孤独だと思っている人ではない。独りでご飯を食べてもネガティブな気持ちにはなっていない。そんな五郎の背中を見続けて、観客は日常に戻るんです」(石井健)
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10日から全国公開。1時間50分。バリアフリー上映対応。
松重豊
まつしげ・ゆたか 昭和38年、福岡県出身。明治大卒業と同時に蜷川幸雄主宰の「GEKISHA NINAGAWA STUDIO」に入団、演劇活動を始める。ドラマは「ちりとてちん」「八重の桜」「HERO」など。映画も「しゃべれどもしゃべれども」「アウトレイジビヨンド」など多数出演。