小惑星「アオ(Ao)」命名 『恋する小惑星』にちなんだアプリによる市民科学的発見
■小惑星アオは市民科学の成功例
『恋アス』において、木ノ幡みらと同じ名前である恒星「ミラ(Mira)」はあるものの、真中あおと同じ名前の天体はないことが、約束の内容に繋がったことが描写されています。また、作中では言及がなく、それぞれ由来が関連していないために全くの偶然であるものの、3633番小惑星には「ミラ(Mira)」、3231番小惑星には「ミラ(Mila)」という名称が付けられています(※7)。今回、小惑星の名称として認められたことにより、アオはミラと共に星の名前となったことになります。 なお、今回のアオの命名は、COIAS上で行われた非公式なファン活動の一環として行われました。また、命名権を得てから提案・承認されるには、最短でも数か月かかります。『恋アス』は連載を2024年8月号にて終了しましたが、終了直後に命名提案が承認されたのは全くの偶然です。 先述の通り、アオはCOIASという一般市民が参加するアプリケーションを通じて発見されました。普段はその分野に全く関わりのない人々が自然科学の研究に参加することを市民科学と呼びますが、今回の小惑星の発見から命名に至るまでの流れは、まさに市民科学の典型的な例であると言えるでしょう。 余談ですが、Aoという名称はアルファベット2文字であり、最も短い名称の小惑星の1つとなります。発音記号を文字数として数えないとすると、2文字で表される小惑星はこれで11個目となります。今回の命名は、この短さでも珍しいケースとなっています。
■注釈
※1…小惑星の正式な名称はアルファベット表記が唯一である一方で、日本語表記についての正式な基準はありません。本記事での「アオ」という表記は「1. JAXAなどの日本の宇宙機関は、『イトカワ』や『リュウグウ』のように、小惑星をカタカナ表記することが一般的であること」「2. 名前をそのまま表記している形であるものの、約束に該当するセリフが『アオ』とカタカナ表記であったこと」という背景を踏まえています。 ※2…太陽・地球・小惑星が一直線上に並ぶ衝を4回以上観測することが原則ですが、実際のルールはずっと複雑であり、また例外もあります。 ※3…ただし、特別な理由があれば例外があります。例えば2012年5月には、東日本大震災で大きな被害を受けた地域にちなんだ12個の小惑星が一度に命名されています。これらの小惑星は全て、ローウェル天文台のエドワード・L・G・ボーエル氏が命名権を持っていますが、国立天文台の渡部潤一氏らが調整の上で名称を提案し、一斉に承認されています。 ※4…この禁止措置は、250番小惑星「ベティーナ」の命名権が売買されたことを理由としています。ただし、天文学の普及を図る目的で開かれたイベントにおいて、一般公募で提案された名称を提案することは禁止されていません。 ※5…この時には、2017 BX232と同時に「2017 DH164」にも697545番が付与されています。 ※6…地球近傍小惑星、トロヤ群、太陽系外縁天体など、特定の公転軌道に属する小惑星は、特定の分野の神話に関連した名称のみを付ける決まりとなっています。 ※7…恒星のミラは1662年にヨハネス・ヘヴェリウスが記した論文『不思議な星の小史(Historiola Mirae Stellae)』の表題から不思議を意味するラテン語「Mira」に、3633番小惑星のミラは小惑星などの研究を25年以上行った天文学者であるヒューゴ・ミラ氏(Hugo Mira)に、3231番小惑星のミラは旧ソ連のアイスダンサーであるリュドミラ・アレクセーエヴナ・パホモワ氏(Lyudmila Alekseyevna Pakhomova)に、それぞれちなんでいます。 Source “WGSBN Bulletin Volume 4, #12”.(IAU WG Small Bodies Nomenclature) “Minor Planet Naming Guidelines”.(IAU WG Small Bodies Nomenclature) “(697402) Ao = 2017 BX232”. (IAU Minor Planet Center) “未発見小惑星検出アプリCOIASの公式X (旧Twitter) アカウント”.
彩恵りり / sorae編集部