小惑星「アオ(Ao)」命名 『恋する小惑星』にちなんだアプリによる市民科学的発見
■「アオ」が実物の小惑星に命名!
先述の通り、小惑星の発見が認められるには、複数の観測データが必要です。とはいえ、日々の観測データは膨大であるため、コンピューター上の探索でも見逃されることがあります。そこで、人の目で観測データを精査し、未発見の小惑星を見つけることを目的とする未発見小惑星検出アプリケーション『COIAS』が2023年7月末より公開されています。 COIASの名称は、Quro氏による漫画『恋する小惑星』の略称『恋アス』にちなんでいます。この漫画は高校の地学部を舞台とするフィクション作品ですが、天文学の描写が正確であることで知られています。同漫画では、2人の主人公である真中あおと木ノ幡みらが小さいころに出会った時、小惑星には命名の提案ができることから「アオの星 見つけよう」という約束を交わしたシーンが描かれています。 COIASではハワイ島の「すばる望遠鏡」で観測されたデータを多数の参加者が分析することで、それが発見済みの小惑星に紐づくものか、それとも全く未発見の小惑星であるかを決定します。COIASを通じて新たに発見され、仮符号が付けられた小惑星は1898個ありますが、今回命名された小惑星は、2024年2月18日にCOIASにて存在が報告されました。ただし、小惑星の発見日は観測された日を基準とするため、解析された写真の撮影日である2017年1月23日となり、仮符号もこれに基づく「2017 BX232」となりました。2024年5月15日には、小惑星番号697402番の付与が同日付の小惑星回報で公表されました。小惑星番号の付与は、COIASにおいては初めてのことです(※5)。 そして同年9月2日付で発行されたWGSBN速報4巻12番にて、2017 BX232に提案された名称である「アオ」が承認されたことが公表されました。COIASで発見された小惑星に対する命名は初めてのことです。
==引用== Ao Manaka is a character in the comic/animation Asteroid in Love created by Japanese manga artist Quro. Ao and her friends enjoy Earth Science Club activities in their high school with a dream of naming an asteroid “Ao.” The work encouraged many readers to study Earth and planetary sciences with its accurate depiction of celestial objects and geology. (真中あおは、日本の漫画家Quroによる漫画・アニメ『恋する小惑星』の登場人物です。あおと彼女の友人たちは、高校の地学部で活動を楽しんでおり、小惑星に「アオ」と名付けることを夢見ています。この作品は、天体と地質を正確に描写しており、多くの読者に地球惑星科学を学ぶよう促しました。) == アオは、火星と木星との間にある「小惑星帯」の小惑星であり、平均距離約4億8000万kmの楕円形の公転軌道で太陽の周りを公転しています。見た目の明るさが約21~23等級であることから、直径は約1km程度であると推測されます。特別な点のない典型的な小惑星であると言えますが、公転軌道が特別な小惑星には命名に制限があり(※6)、アオという名前は承認されなかった可能性が高かったと言えます。逆説的ではあるものの、今回は普通の小惑星であることが幸いしたとも言えます。