「室温45度の部屋で、汗かき試飲」 京都大農学部で学んだ女子学生が、サントリーで商品開発する面白さとは?
ロングセラー商品の「伸びしろ」を探せ
2024年4月、サントリーはロングセラー商品「GREEN DA・KA・RA」をリニューアルしました。その商品開発を担当したチームの一人が、渡邉さんです。渡邉さんは2015年に入社後、酒類の商品設計に携わり、現在は「天然水スパークリング レモン」「GREEN DA・KA・RA」などの飲料を担当しています。 「GREEN DA・KA・RA」は、発売から10年以上が経過した、多くのファンがいるロングセラー商品です。どのようなユーザーが購入しているのかなどを分析し、その結果をもとに、商品のリニューアルについて検討してきました。 「たとえば『新しい原料を加えたらどうか』『現在使用している原料の配合バランスを変えれば、お客様にどう感じてもらえるか』といったアイデアを出し、それを配合表としてまとめます。それをもとに、ラボで試作を行い、何度も調整を重ねて最適な配合に落とし込んでいきます。消費者調査を実施し、どのように受け取られるかを確認しながら、仕上げていきました」
室温45度の部屋で試飲
サントリーは、「徹底的なお客様の理解」を大切にしています。これは、どのようなシーンで商品が飲まれるのか、そのときに求められる価値は何かを深く考える手法で、風味や機能など商品の要素を細かく分析して設計するアプローチです。 「GREEN DA・KA・RAのように、すでに多くのファンがいる商品は、好評の果実や食塩など7種の自然素材でつくったすっきり飲みやすい味わいは残しつつ、飲み心地やテクスチャー(質感)などのわずかな改良を積み重ねる必要があります。私も消費者の一人として実際に飲むシーンを意識するために、施設の中にある45度の部屋で汗をかきながら何度も試飲しました。汗をかいたときに飲んだ感じなど、データだけではわからないことを体感するためです」 その結果、リニューアルした商品では、果実オイルを使った白濁設計を調整し、発汗時における「飲み心地の良さ」や「補給感」をより強化する工夫を加え、好評を得ました。 「自分が関わったものが商品化され、世の中に出ていくことに大きなやりがいを感じます。自分たちが考えた商品が店頭に並び、それを手に取ったお客様においしいと感じていただけることがこの仕事の一番の喜びだと感じています」 一方で、いくら自分たちが「おいしい」と感じた商品でも、必ずしも市場で成功するとは限りません。過去には、自信を持って開発し、周りからも評価されたチューハイが思ったほど売れず、販売中止になったこともありました。 「味は、正解がはっきりしないものです。また、単においしいだけでは不十分で、お客様の飲用シーンやニーズを深く理解して、それを商品の価値に反映させることが大切だと学びました。失敗の原因を見極める難しさを痛感しますが、それもやりがいになっているかもしれません」