国内最大のサンゴ礁で白化現象、「将来サンゴが消える可能性も」と専門家
環境省は、沖縄県の石垣島と西表島の間にある国内最大のサンゴ礁「石西礁湖(せきせいしょうこ)」で、サンゴの約7割が死滅したと発表しました。平年よりも高かった海面水温が原因と見ており、専門家は、水温が高い年が続けば、将来この地からサンゴが消える可能性もありうると懸念します。
サンゴの白化現象とは?
サンゴのうち、浅い海に住む「造礁サンゴ」は、体内に植物プランクトンが共生しています。ふだんは、植物プランクトンが光合成でエネルギーを作り出し、サンゴに与えています。サンゴはもともと透明な体をしていますが、緑色や茶色に見えるのは植物プランクトンの色のせいです。 ところが、サンゴがストレスを受けると、体内の植物プランクトンが抜け出てしまい、白い石灰質の骨格が透けて見えるようになります。これを「白化(はっか)現象」と呼び、光合成によるエネルギーを得られなくなったサンゴは、やがて死に至ります。
ストレスを与えた主犯は高い海水温
ストレスを与える要因は、高い水温や低い水温、淡水や土砂の流入などが考えられています。2016年前半の段階で、高水温による白化現象の発生を予想した環境省は、7月26日~8月17日、9月29日~10月4日、11月28日~12月21日の3回にわたり、計35地点で調査を実施しました。その結果、白化を経て死んだサンゴの割合は、1回目の5.4%から、2回目は56.7%、3回目には70.1%に達しました。 サンゴの生態を研究する国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの山野博哉センター長は、「広範囲に影響が出ており、水温以外が主原因とは考えにくい」として、ストレスを与えた主犯は高水温の公算が大きいと見ています。 白化現象は、月の平均水温がおおむね30℃を超えると発生しやすい傾向があるそうですが、沖縄気象台によると、2016年の6~8月の平均水温は平年を1.1℃上回る30.1℃でした。下の海水とかき混ぜて海面の水温を下げてくれる台風の接近数も、2016年は平年の4.1件(西表島)、4.3件(石垣島)に対して3件と少なかったのも影響した可能性があるといいます。
復活しつつあったサンゴがいなくなることも
石西礁湖では、2007年にも白化現象で2016年と同じ程度サンゴが死にましたが、その時も高水温がおもな原因とされています。山野センター長は「地球温暖化で水温が上がりつつあり、近い将来、毎年のように高水温になれば、サンゴがいなくなることもありうる」と懸念します。サンゴを守るためには、地球温暖化対策が必須であるほか、陸からの土砂流入の防止を含めた他のストレス要因の抑制も必要と訴えます。 環境省は、2月に石垣市で開催予定の産官学民で構成する「石西礁湖自然再生協議会」で今回の調査結果を報告するとともに、今後の対応策を検討する予定です。 (取材・文:具志堅浩二)