【後編】再登校支援で批判を浴びたスダチの主張 自治体と民間企業の連携、文科省の見解は?
表現によっては消費者契約法や景品表示法に抵触する恐れも
スダチを利用した保護者によると、契約書には「サービスの内容を口外してはならない」とする口外禁止条項が盛り込まれていた。また、不安をあおって契約を促す事業者もいるようだ。こうした不登校ビジネスの契約面において、何か問題はないのだろうか。 弁護士資格を持つ兵庫教育大学教授の神内聡氏は、契約書全体を見ないとはっきりしたことは言えないと前置きしたうえで、次のように話す。 「口外禁止条項は業務委託などの契約では一般的ですが、対消費者との契約においては珍しい。専門的知識があることを前提とした企業や専門家間の契約とは違い、消費者は専門的知識や情報が不足しがちな立場にあります。そうした中で口外禁止条項があると、消費者は何らかの被害を受けたときに相談する権利が制限され、消費者契約法の主旨にそぐわない。また、不安をあおる、サポートが失敗しても一切責任を取らないといった記載がある場合なども消費者契約法に抵触する可能性があります。本来なら教育産業でもガイドラインがあることが望ましく、それにのっとったリスク説明もあるべきでしょう」 またスダチは自社HPや広告の中で「平均3週間で再登校」「再登校できたお子様90%以上」とアピールしてきた。これについて神内氏は、「サンプル数や測定期間といった数値の裏付けをしっかり示さないと、サービスの内容や効果を実際よりも著しく優良であると誤認させる優良誤認表示に該当し、景品表示法に抵触する恐れがある」と指摘する。 そのほか、スダチでは子どもにサービスを利用していることを伝えないように求めているが、この点についても、「子どもの意思をまったく確認しないで進めるのは、子どもの権利という観点から問題ではないでしょうか」と述べる。
「『親の子どもに対する関わりの影響力』は無視できない」
では、インターネット上での批判を含め、種々の指摘をスダチはどう受け止めているのか。 まず一連の批判報道に対して、小川氏は「ネガティブな情報だけが意図的に取り上げられていると感じる」と語る。 「当社は2020年にサービスを開始してから、1300人以上のお子さんの再登校を実現できています。感謝の声も多く、実例としてサービス利用者へのインタビュー動画をYouTubeで公開しているほか、HP上では直筆のアンケート回答を多数掲載しています。多くのご家庭の問題解決に貢献してきたという事実はしっかりと伝えたい」 小川氏によると、スクールカウンセラーをはじめとした専門機関に相談を重ねてきたものの、子どもの状況が変わらないため、スダチに支援を求める保護者が多いという。 「私も以前は、1年ほど『見守り』を重視した不登校支援に携わっていたことがありました。しかし『見守り』ではうまくいかず、もどかしさを感じながら試行錯誤を繰り返す中で、私たちのメソッドの元となる考え方に出合いました」 その実践者の名前は明かせないとのことだが、従来の「見守り」とは異なるアプローチによって親子関係の改善や再登校という結果を出していることに関心を抱き、自らもメソッドを習得し、事業として取り組むことにしたという。 スダチに対する批判の1つに、「不登校の原因を親子関係のみに求めていること」がある。これに対して小川氏は、こう語る。 「家庭だけが原因ではないことは当然承知していますが、どのような場合も『親の子どもに対する関わりの影響力』は無視できないと考えています。スダチでは不登校を『学校』と『家庭』の2軸で捉えており、このうち学校の問題の解決は教育行政や学校現場が取り組むべきことなので、私たちは家庭の状況をよくすることに力を注いでいます」 メソッドの根拠については、「実際に成果が出ていることが、まず何よりの根拠」と小川氏は説明する。また現在、複数名の心理学の専門家とともに、スダチのメソッドの有効性をエビデンスとして示すための学術論文の作成も進めている。査読も1回挟んでおり、来年には公表できるという。