機動力磨いた「バントゲーム」 城東、独自練習で夢つかむ センバツ
10年に1度の寒波に凍える日本列島に一足早い春の便りが届いた。第95回記念選抜高校野球大会の出場36校が決まった27日、あこがれの甲子園切符をつかんだ球児たちの歓声が冬空にこだました。 【センバツ出場の一報に喜ぶ各校を写真で】 創部28年目で、春夏通じて初の甲子園出場が決まった21世紀枠の城東(徳島)。徳島市にあり、作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(故人)らを輩出した県立の進学校だ。野球部の部訓は「野球人である前に模範的な生徒であれ」で、グラウンド以外の練習場所としている吉野川河川敷運動広場の清掃活動を続けている。 部員数は女子マネジャー1人を含め、わずか13人。横70メートル、縦90メートルの狭い学校グラウンドはラグビー部やサッカー部などと共用で、最大六つの部が同時に練習することもある。野球部が常に使えるのは内野部分だけだ。勉強にも重きを置いて練習時間が限られるため、メニューの多くを選手自身が考えて工夫する。守備練習では、野球経験がないマネジャーの永野悠菜さん(2年)もノックを打つ。 独自の練習メニューの一つが、犠打だけで点を取る「バントゲーム」だ。4アウト制で無死一、二塁から始める。ここで磨き上げた機動力を生かし、昨夏の徳島大会では2ランスクイズを成功。昨秋の県大会は4強入りした。 この日、ナインは7時間目の授業が終わった午後4時過ぎにグラウンドで藤本和史校長からあこがれの甲子園行きの知らせを聞いた。森本凱斗(かいと)主将(2年)は「城東の持ち味の機動力を生かして、どんどん甲子園を駆け回りたい」と意気込んだ。喜びを爆発させる選手たちの横で、マネジャーの永野さんは感極まって涙を流していた。【山本芳博】