米大統領選介入が成功した理由:2016年、ロシアはトランプ勝利と「分断」も狙った
ロシアの組織とツイッターで接触したトランプ陣営
最も重要な問題は、ロシア情報機関などの工作員らとトランプ陣営の「共謀」が実際にあったのかどうかだ。 モラー報告書によると、IRAが管理するツイッター上で当時のトランプ候補の長男ジュニア氏、次男エリック氏や、陣営のマイケル・フリン元米国防情報局(DIA)局長、「トランプのトリックスター」と呼ばれたロジャー・ストーン氏らがリツイートし、やり取りをしていたことが分かる。ストーン氏はウィキリークスとも接触したようだ。 フリン氏はセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使としばしば会談した事実もある。 2016年6月9日には、トランプタワーで、ロシア人弁護士ナタリア・ベゼルニツカヤ氏、ロビイストのリナト・アフメトシン氏らが、ジュニア氏のほか、娘婿のジャレド・クシュナー氏、トランプ選対本部長ポール・マナフォート氏らと会合を持ったと伝えられる。 しかし、例えばIRAが全米各地でSNSアカウントのネットワークを形成するため米国人をリクルートした際、トランプ陣営が協力したとか、工作に関する謀議を行ったといった事実やその証拠は得られていない。 マナフォート、フリン、ストーン氏らは刑事訴追されたが、いずれも「米露共謀」の本筋にかかわる違法行為で立件されたわけではなく、真相はなお闇に包まれている。
分断の拡大狙いBLMデモも扇動
米国では2013年以降、黒人が警察官に殺されたのをきっかけに「ブラック・ライブズ・マター」(BLM、黒人の命は大切だ)というシュプレヒコールで人種差別に反対する運動が広がった。「反トランプ」の運動と重なるとみられていたが、実はこの運動にもロシアが一時期関与していたことが分かった。 全米の主要都市に拡大したこの運動をボルティモアで主催した「ブラックティビスト」という組織のSNSのアカウントはロシアの秘密工作の一環として設置されていた。彼らは反トランプ系グループも扇動していたのだ。 「トランプ当選」から4日後の2016年11月12日、ニューヨークではトランプ抗議デモが行われた。SNSの投稿を6万1000人がシェアして街に出た。BLMのグループもこれに参加したようだ。 こうした動きが事実とすれば、ロシアは明らかに米国社会の分断を誘発するプロパガンダ工作をしていたことになる。分断を視野にトランプ支援を行っていたのだ。