マイナ保険証“強制”の「法的欠陥」とは? “1415人の医師ら”が国を訴えた「行政訴訟」が結審、11月判決へ
療養担当規則への「法律による委任」が欠けている?
原告弁護団の二関辰郎(にのせき たつお)弁護士は、結審後の記者会見において、本件訴訟で行われた多岐にわたる議論のなかから、「法律で命令等への委任を定めているか」に関する議論の一部を紹介した。 二関弁護士:「国側は、健康保険法70条1項を委任の根拠規定だと主張している。この条文は『保険医療機関または保険薬局は、…保険医または…保険薬剤師に、…診療または調剤に当たらせるほか、厚生労働省令で定めることにより、療養の給付を担当しなければならない』と定めている。 これを根拠に、療養担当規則への『基本事項の全般の定めを厚生労働省令に委任するもの』だという。 しかし、法70条1項は『療養の給付』について厚生労働省令に委任する規定であり、『資格確認』についてはなんら委任していない。両者は別のものだ。 また、健康保険法には、他にも『療養の給付』に関わる委任を定めた条文がおかれている。そして、それらの個々の条文による委任を受けて、厚生労働省が規則を制定している。 私たちが挙げたそれらの条文は、国側が証拠として提出した『健康保険法の解釈と運用』(法研)という本の中で、『療養の給付』に関わる具体的な条文として紹介されていたものだ。 もし、国側が主張するように、法70条1項が『全般的な委任』を定めたものだとすれば、それらの条文でわざわざ委任していることの説明がつかない。省令等に委任するには法70条1項だけあればよく、他の条文の委任はすべて不要な規定ということになってしまい、不合理だ」
国側の主張へは「ほぼ反論済み」で「早期の判決」を優先
二関弁護士は、これまでの訴訟の流れを次のように振り返った。 二関弁護士:「前々回の口頭弁論(5月17日・第6回)の際、原告側が裁判所に対し、健康保険証の新規発行が停止される12月2日より前に判決をしてほしいと希望を述べた。 それに対し、裁判所が前回期日(6月28日・第7回)に、今回期日(9月19日・第8回)で結審する予定だと言ってくれて、国側に対し、最後の主張を出すように促した。それで、国側の準備書面が9月13日の夕方に提出された。 もし裁判所がそれに対する反論を促してきたら、応じなければならないと思っていたが、特にそういうこともなく、今日で結審し、11月28日に判決をしてもらえることになった。 我々は訴状の段階から、最高裁判例・調査官解説が示した判断枠組みに即した議論を組み立て、国側もそれに答える議論をしてきた。それを積み重ねてきている。 国側が最後に提出した準備書面は、繰り返しが多く、それらについてはすでに反論済みだ。 判決の期日を遅らせてまで反論を行う必要性は乏しいと判断した」 国側が提出した準備書面については、判決を遅らせてまで反論する必要性が低いと判断し、健康保険証の新規発行が停止される12月2日より前に判決が出ることを優先したという。 弁護団の喜田村洋一弁護士は、以下のように締めくくった。 喜田村弁護士:「オンライン資格確認の義務付けという重大な問題について、閣議決定、あるいは厚生労働大臣が決めることは、国民の議論を封殺するものだ。 国会の場で、国民の代表である衆議院議員、参議院議員がそれぞれの英知を持ち寄って議論して決めなければならない。 そのベーシックなやり方をとらず、大臣だけによって決めるのは異常だ」