「物流の働き方改革」で何が変わったか!? トラックドライバーの視点から2024年を総括
運賃と賃金の上昇について
2023年あたりから、日本でも急に物価上昇が始まった。平成初期から約30年間デフレが続き、日本の物価はほとんど上がらなかった。大きな変化である。 月や季節が変わる毎に「パンやマーガリンの○○品目が値上げされ、過去最多の商品数です」というニュースが報道された。 コンビニの弁当も400円台から600円台へ上がり、気安く買えなくなった。物価は実感で1.2~1.5倍になっているのではないか。 2022年にドイツに行った時は、ファンタ1本600円、サンドウィッチ1000円に驚いたが、そうした海外の物価高にも影響を受けているのではないか。 ドライバーの賃上げはどうかというと、2024年の運輸・郵便業の賃金引上げ率は平均で3.2%と、全産業平均の4.1%を下回り、賃上げ実施率も74.4%で全業種の中で最も低かった(厚労省10月発表)。 ドライバーの生活はどんどん苦しくなってしまう。「人手が足りない」、「輸送力が逼迫している」というのになぜトラック運賃やドライバーの賃金は上がらないのだろうか? 僕はこう考える。もともと2023年の段階で、トラック運送業の輸送力が供給過剰であった。だから、政府が「標準的な運賃」や「適正運賃」を唱えても、2024年までの段階では、「ウチが安くやります」という所が出てきてしまう。市場原理である。 そして、「WebKIT」などの求貨求車システムで変動する運賃相場と、企業間物流(専属取引)の運賃相場の決まり方はやや違う。専属取引の場合は、契約価格なので固定相場で決まってしまう。 燃料価格が上がっても、燃油サーチャージの契約が無ければ契約途中での運賃値上げはしにくい。トラック運送は、荷主からみれば、部品を納入するのと同じ、いわば下請け的立場だ。どうしても力関係が弱い。 これまで30年間、運賃を上げる必要がなかったが、物価高で諸経費(運送原価)が上がっている今、運賃を上げる必要が出てきた。 運送会社の契約担当者は運賃交渉で苦労をしているのではないだろうか。車両価格や燃料、油脂類などあらゆる物の仕入れ値が上がっている現状からすると、2割程度の運賃値上げは必要だろう。 価格決定メカニズムの話でいうと、外貿コンテナ船の運賃などは需要と供給の関係で運賃が乱高下する。 現在は運賃が高騰しており、海運大手3社の24年4~9月期決算は、利益率が売上高の2割を超えるなど絶好調である。対して、陸運大手9社の同時期決算は4社が減益など、なかなか苦戦を強いられている。 トラックの輸送力が本当に逼迫しているかの見方は立場によっても異なるが、今後、高齢ドライバーの引退、人手不足などで輸送力が落ち込んでくれば、トラックの運賃相場や賃金が需給バランスで上がってくるのかも知れない。 だが、他業種で人材余剰が出て運送業界の不足分を満たせば賃金は上昇しないし、自動運転が予想より早く実現すれば運転手は余って賃金はかえって下落する危惧もある。なかなか先の事は見通せない。