【アジア】【年始特集】業績見通し、回復は限定的 24年下半期、増収増益は25%
NNAがアジア太平洋地域に進出する日系企業に2024年下半期(7~12月)の業績見通しを聞いたところ、「増収増益」との回答が全体の25.2%を占めた。増収増益予測は前回調査の24年上半期(1~6月)業績見通しからほぼ横ばい。全回答で最も多かったのは「減収減益」(30.9%)で、この構図も前回調査から変化がなかった。約1年前の前々回調査(23年下半期の業績見通し)では「減収減益」が4割強、「増収増益」が10%台だったことと比べると日系企業の業績は持ち直してはいるが、回復に向けた歩みは足踏み状態にあると言えそうだ。 NNAが24年12月6~12日に実施した調査(有効回答数670件)によると、アジア太平洋地域に進出する日系企業の24年下半期の業績見通しは前年同期比で「減収減益」が最多で、これに「増収増益」、「前年同期並み」(19.4%)、「減収増益」(9.0%)、「増収減益」(8.4%)と続いた。 約半年前に実施した前回調査では、「減収減益」が30.5%、「増収増益」が25.1%と今回調査と大差がなかった。約1年前の前々回調査では「減収減益」が40.7%、「増収増益」が19.1%だった。 24年下半期に「増収増益」となる理由では、「前年同期があまりにもひどい業績だったため」(台湾/電機・電子・半導体)、「前年同期が特に悪かったため」(インドネシア/鉄鋼・金属)、「前年度の落ち込みの反動」(中国/食品・飲料)と多くの国・地域、幅広い業種で低迷した前年同期の反動であるとの声が目立った。23年下半期を対象とした前々回調査では、世界的な経済成長の停滞を背景にした受注減などを理由に、減収減益を予測する企業が多かった。 ■ベトナム、半数以上が増収増益 「増収増益」と答えた企業の比率が最も高かったのはベトナムで、50.9%となり調査対象国・地域で唯一、50%を超えた。これにインド(46.7%)、フィリピン(46.3%)が続いた。最低は香港の10.3%。ほか韓国(11.8%)、ミャンマー(14.3%)、タイ(14.8%)、インドネシア(14.9%)、オーストラリア(18.4%)も10%台だった。 米国向けを中心に好調な輸出がけん引役となり、24年第3四半期(7~9月)の国内総生産(GDP)伸び率が前年同期比7.4%と今回の調査対象国・地域で最高となったベトナム。「増収増益」の理由では前年同期の反動以外にも、経済成長を背景に「販売増によるもの」(食品・飲料)、「需要拡大による販売数量の増加、各種コストダウンの寄与」(石油・化学・エネルギー)といった声のほか、「中国からの商品調達移転」(貿易・商社)などもあった。 ベトナムに次いで「増収増益」の回答比率が高かったインド、フィリピンも、24年第3四半期の経済成長率は5%台と堅調。両国から挙がった「増収増益」の理由は、「新規の商売が始まったため」(インド/繊維)、「新規の拡販が順調」(インド/石油・化学・エネルギー)、「自動車向け顧客の注文増」(フィリピン/四輪・二輪車・部品)、「米価の回復により農機の売り上げが増加したため」(フィリピン/機械・機械部品)など販売、受注が好調とする声が目立った。 一方、シンガポールとマレーシアは、24年第3四半期の経済成長率がインドやフィリピンと同じく5%台と低くないものの、「増収増益」の比率は20%台で、「減収減益」と同数またはこれを下回った。2カ国で「減収減益」と回答した企業の理由を見ると、「市況回復には時間がかかる」(マレーシア/電機・電子・半導体)、「コモディティー、穀物市況の低迷、競争の激化など」(シンガポール/貿易・商社)などがあった。 タイとインドネシアでは、さらに日系企業の業績回復が遅れている。タイとインドネシアは「増収増益」と回答した企業の比率が東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国の中で6番目、5番目と低く、一方で「減収減益」と回答した企業の比率はそれぞれ43.2%、42.6%となり、全調査対象国・地域の中で1、2番目に高かった。 ASEANの中で最大の自動車市場を抱えるインドネシアでは、「減収減益」の理由でも「自動車の販売台数減少」(四輪・二輪車・部品)、「自動車関連の落ち込みがひどい」(四輪・二輪車・部品)と同産業の不振を挙げる企業が多かった。24年第3四半期の経済成長率が3.0%と2年ぶりの高水準となったものの、ASEAN主要6カ国中で最低の伸び率だったタイでは、「家計債務の高止まりとローン審査の厳格化」(四輪・二輪車・部品)、「投資意欲の低さ」(小売り・卸売り)などが「減収減益」につながっているとする意見があった。 ■中国、「増収増益」は越印比に次ぐ4位 東アジアに目を転じると、中国では「増収増益」との回答が26.8%を占め、調査対象国・地域の中で4番目に高かった。「増収増益」と回答した企業の比率は前回(24年上半期の見通し)の23.5%から3.3ポイント拡大。不動産市況の低迷による消費や投資の冷え込み、電気自動車(EV)で出遅れた日系自動車メーカーの販売不振が続くが、増収増益予測がじわりと拡大している。 中国で「増収増益」と回答した企業の理由では、「中国系企業と取引を開始したため」(サービス)や「国策で内製化を進めている商品を扱っているため」(石油・化学・エネルギー)などがあった。ただ中国では「減収減益」と回答した企業の比率が36.9%と、依然として「増収増益」を上回っている。「減収減益」の理由では、「日系自動車メーカーの不振および自社が新規受注を獲得できていない」(四輪・二輪車・部品)、「個人消費の減少による影響」(機械・機械部品)などが挙がった。 中国景気の影響を受けやすく、内需も振るわない香港では、「増収増益」の回答比率が全調査対象国・地域で最低だった。香港で「減収減益」の理由を聞いたところ、「中国本土における需要減退およびデフレ輸出に加えて、当地物価高の影響あり」(貿易・商社)、「日系企業の縮退が進み、事業として低下局面に入っているため」(IT・通信)などがあった。 台湾は「増収増益」の回答比率が20.0%で、調査対象国・地域のうちほぼ中央の7番目に高かった。理由としては「前年が悪すぎており、それから比べるとはるかによい」(機械・機械部品)と前年の反動を挙げる声が目立った。 韓国は「増収増益」の回答比率が香港に次いで2番目に低かった。「減収減益」は17.6%、「前年同期並み」は29.4%だった。減収減益の理由では「2次電池市場の低迷」(その他の製造業)、前年同期並みでは「電子業界を中心とした経済状況の悪化」(機械・機械部品)などがあった。 ■好業績は電機・電子・半導体 業績見通しを回答企業の業種別で見ると、「増収増益」と答えた比率が30%を超えたのは全17業種中6業種だった。6業種は「外食」(50.0%)、「電機・電子・半導体」(35.9%)、「食品・飲料」(35.3%)、「石油・化学・エネルギー」(32.3%)、「IT・通信」(31.3%)、「貿易・商社」(30.9%)。「減収減益」の比率が30%超えた業種は「四輪・二輪・部品」(50.0%)、「小売り・卸売り」(37.5%)、「鉄鋼・金属」(36.0%)、「運搬・倉庫」(31.6%)、「機械・機械部品」(31.3%)の5業種だった。