【このニュースって何?】ロシアに北朝鮮兵1万人 → ロシアと北朝鮮はどんな関係?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
朝鮮戦争で支援関係
ウクライナと激しい戦闘をしているロシアに北朝鮮兵が送り込まれたという報道があります。韓国やアメリカの当局が公表した情報で、その数は、韓国の情報機関は約1万2千人、アメリカの国防総省は約1万人としています。すでに戦闘地に派遣されているとの情報もあり、北朝鮮兵が実際にウクライナ軍と戦っていれば、北朝鮮が参戦したということになります。ウクライナのゼレンスキー大統領は「世界大戦への一歩」と言っています。「ロシアのウクライナ侵攻」とよばれているこの戦いは、より深刻な局面に入った可能性があります。 そもそも北朝鮮はなぜロシアに兵を送り込み、遠く離れたウクライナとロシアの国境付近に出向いて戦うのでしょうか。その理由を考えてみましょう。 まず、両国関係の歴史をひもときましょう。北朝鮮は第2次世界大戦が終わった後にできた国です。ロシアの前身であるソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄して、第2次世界大戦終結直前の1945年8月8日、日本に宣戦布告をしました。そして、北方領土や中国東北部にあった日本の傀儡(かいらい)国家である満州国に攻め込みました。その勢いで日本の植民地だった朝鮮半島北部にも侵攻しました。 第2次世界大戦は8月15日に日本が無条件降伏をして終わりましたが、その後は戦勝国であるアメリカとソ連のにらみ合いが各地で起こりました。自由主義陣営(西)の盟主であるアメリカと社会主義陣営(東)の盟主であるソ連が対立する「東西冷戦」の始まりです。朝鮮半島にはアメリカ軍も入り、北緯38度線以北はソ連が、以南はアメリカが占領し、にらみ合い状態になりました。 そして、48年8月、南にはアメリカが後押しした大韓民国(韓国)が樹立され、翌9月、北にはソ連が後押しした朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が樹立されました。韓国は北朝鮮と国境を接するだけですが、北朝鮮は西から北にかけて中国と国境を接し、東側ではソ連(ロシア)と国境を接しています。 にらみ合いが戦争に発展したのは50年のことです。戦中にソ連にいた金日成(キムイルソン)首相(今の金正恩〈キムジョンウン〉総書記の祖父)が北朝鮮軍を率いて38度線を越えて韓国に侵攻し、朝鮮戦争が始まります。 ソ連は第3次世界大戦に発展することを恐れて戦闘に加わりませんでしたが、北朝鮮に武器を与えたり兵士の訓練をしたりして支援をしました。直接戦闘に加わったのは、49年に建国した中国でした。中国も社会主義国であり、北朝鮮が崩壊することを恐れて参戦したのです。戦争は多くの死傷者を出す戦いの末、再び38度線を境界として休戦となり、今に至っています。この戦争をともに戦ったことで、中国と北朝鮮は「血の同盟」といわれる固い絆で結ばれました。