【このニュースって何?】ロシアに北朝鮮兵1万人 → ロシアと北朝鮮はどんな関係?
事実上の軍事同盟
その後、北朝鮮はソ連の支援を受けて経済的に発展します。70年代半ばまでは工業国として韓国よりも豊かだったとされています。ただ、その後は経済的に苦しくなったソ連の支援が細るなどして、北朝鮮は貧しくなっていきます。一方、韓国は「漢江(ハンガン)の奇跡」といわれる経済発展を遂げ、経済力ははっきり逆転しました。 90年代になると、ソ連が崩壊し、冷戦が終わりました。ソ連はいくつもの国に分かれましたが、中心となった国はロシアでした。ロシアは市場にまかせる経済体制をとり、同じ市場経済の韓国との関係は深まりましたが、社会主義のままの北朝鮮との関係は薄くなっていきました。 苦境の北朝鮮を支えたのは中国でした。北朝鮮の貿易相手はほとんどが中国でした。中国としては、韓国が主導する形で朝鮮半島が統一されると国境をはさんでアメリカ軍と対峙(たいじ)することになり、それをいやがった中国は北朝鮮の体制を維持しようとしたと考えられます。理由はどうあれ、北朝鮮にとって中国はもっとも大切な国になりました。 ただ、21世紀になって北朝鮮が本気で核開発をはじめると、中国にも北朝鮮への警戒感が生まれました。今も中国は朝鮮戦争を一緒に戦った北朝鮮を「兄弟国」とよんでいますが、以前に比べると疎遠になっているとみる人が多くなっています。 一方、ロシアは最近になって北朝鮮との関係を急速に深めています。背景にはウクライナ侵攻が長引き、兵器や兵士が不足してきていることがあります。2023年9月には、プーチン大統領が北朝鮮のトップである金正恩総書記をロシアに招き、会談しました。 24年6月には今度は金正恩総書記がプーチン大統領を北朝鮮に招き、会談しました。この時、両国は「包括的戦略パートナーシップ条約」を結びました。これは有事の際の相互の軍事支援を約束したものです。つまり、どちらかが戦争をはじめると一緒に戦うという軍事同盟を結んだのです。今回、北朝鮮がロシアに兵士を送ったのは、この条約に沿ったものとみられます。 兵士不足になっているロシアにとって北朝鮮兵が加わるのは大きな援軍になりますが、北朝鮮にとってもメリットがあります。兵士に実戦経験を積ませることや提供した兵器の性能をためすことができるほか、ミサイルや核弾頭などの技術でロシアからより踏み込んだ協力を得るねらいもあるとみられます。 両国にとってはメリットがあるとしても、世界にとっては心配がさらに大きくなったと言えます。戦争がさらに激しいものになり、さらに多くの死傷者を生む可能性が高まります。停戦交渉が遠のく可能性もあります。参戦国がさらに増えて、ゼレンスキー大統領が言うように世界大戦に近づくことだって絶対ないとは言えません。 ロシアも北朝鮮も独裁国家です。独裁者と独裁者が約束すれば、戦争に加わることもあっという間に決まってしまいます。北朝鮮に大きな影響力を持つ中国なら止めることができるかもしれませんが、中国もそこまで関わるつもりはなさそうです。ロシアも北朝鮮も日本のすぐ近くの国です。東アジア地域への影響も心配しないといけない状況になっています。
一色清 ジャーナリスト