「松本人志は今からでも会見をした方がいい」 危機管理コンサルタントが断言する理由
もちろんそうしたところで、世間の全員が味方になることはありませんが、それは仕方がないのです。大切なのは熱烈なシンパでもアンチでもない人たちを味方にすることです。 クライアントの中には、一発逆転のような解決策を求める方もいますが、危機管理が必要な局面では大きなマイナスから大きなプラスに一気に局面を変えることは不可能だと心得た方がいい。これもセオリーです。
「会議で楽観論と悲観論をぶつけ合う」というセオリー
ここまでの説明を読まれてなお「後からなら言えるけど、そんなに冷静に対応はできない」と感じる方もいるかもしれません。そもそもセオリーなんて覚えてられるか、と。 そうした方、特に企業の役員といった立場にいる方にお勧めしたいのは、危機管理が必要な局面での会議の望ましい進め方だけでも頭に入れておくことです。 危機管理を検討する会議では、常に楽観論を言う役と、悲観論を言う役とを定めておくのが望ましいあり方です。そういう「役目」を定めておけば、安心して意見が言えます。 ともすれば、社長など立場が上の人の意見に全体の意見が傾いてしまいがちです。しかし展開を予測するためには楽観論と悲観論を両方出した上で検討する必要があります。 最初に役目を定めれば、社長の見解と正反対の意見も言いやすくなります。標準論は放っておいても出てくるのでこの場合、言う役を定める必要はありません。 楽観論と標準論と悲観論、この三つの推論と、実際に起きてくるさまざまな事象とを対比していき、どの論が当たっているかを判断し、未来を予測して対策を練っておくのです。 松本さんサイドは、松本さんの当初の怒りに引っ張られて、こうした会議をできなかったのかもしれない、とも思います。悲観論をきちんとぶつける役目の人はいたのでしょうか。 しかしこれから再生の道を歩むにあたっても、やはりこうした形の会議を行うのがセオリーではないかと考えます。
田中優介(たなか・ゆうすけ) 1987(昭和62)年東京都生まれ。企業の危機管理コンサルタント。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社入社。お客様相談室、広報部などに勤務後、株式会社リスク・ヘッジ入社。同社代表取締役社長。著書に『その対応では会社が傾く プロが教える危機管理教室』など。 デイリー新潮編集部
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