【繰り返される電力融通】猛暑のせいでは決してない、電気が不足し不安定化する理由
夕方に電気が不足する理由
12年のFIT制度の導入後、設置が容易で電気の買取価格が有利に設定されていた太陽光発電設備が、事業用を中心に大量に導入されました。 導入は土地代が安く、日照に恵まれた場所から始まりましたので、当初は南九州に設置が集中しましたが、今は全国に広がっています。事業用とされる10kW以上の設備が累計で200万kW以上設置されている道県は11にのぼります(図-3)。東電管内に大きな設置量があります。 今年度全国の電力供給に利用される太陽光発電設備は、7737万kWとされています。全発電設備容量は3億2695万kWですので、太陽光発電設備は約4分の1近くを占めています。 太陽光発電設備は、日が陰り始めると発電量が減少し、日没後は発電できません。いま、夕方に電力供給が不足する理由は、太陽光設備からの発電量が減少すると供給量が不足するためです。 図-4は図-2に太陽光の発電量を追加し、需要量との関係を示しています。需要量が減少するよりも早く太陽光の発電量が減少します。この時に太陽光からの発電量の落ち込み分を補う発電設備がなければ、供給は不足します。 太陽光発電設備は増加していますが、いつも発電可能な火力発電設備が減少しているために、太陽光からの発電量が減少する時に電気が不足する事態になりました。
減少する火力発電設備
太陽光発電設備の導入が増えても、火力発電設備が維持されていれば、供給量は不足しないはずです。しかし、火力発電設備は減少しています。図-5が2014年度と2024年度の発電用設備容量を示しています。 総発電設備容量は、太陽光発電設備を中心とした再エネ設備の導入により増加していますが、火力発電設備、中でも石油火力発電設備容量は大きく減少しています。その理由は電力市場の自由化にあります。 石油火力は、石炭、液化天然ガス(LNG)火力との比較では燃料費が高くなります。ただし、重油の調達は容易ですし、需要に合わせた出力調整も簡単です。 このため需要が急増する時には石油火力を利用するのが普通です。石油火力は夏季、冬季の一時期しか利用されないため、その利用率は低くなります。