引退試合で同点2ラン“ロッテ次期監督”井口資仁がセレモニーで所信演説
井口は、2009年に凱旋帰国、ロッテのユニホームを着た。 この日、長女の琳王さんが始球式を行い、3人のお子さんからセレモニーで花束を贈呈されたが、フィリースからメジャー5年目のシーズンのオファーがあったにもかかわらず断って帰国した理由は、家族の生活を守るためだった。シカゴと違い、フィラデルフィアの教育環境が合わず、井口はフィリーズのオファーを断った。だが、そのことでロッテと深い縁ができてダイエー時代より1年長い9年もプレーして、2010年の“下克上日本一”に大きく貢献、そして今回、ついに監督オファーを受けることになったのである。 井口は、「自分の中で色んな選択肢があるので、いずれまた着たい気持ちもありますし、これからじっくり考えていきます」と言うに止まり、監督オファーについては言及しなかった。 だが、水面下では、阪神の今岡真訪・打撃兼野手総合コーチに入閣要請するなど“井口ロッテ”作りはスタートしている。 引退セレモニーでは、「わがマリーンズは、このような順位で終わるようなチームではありません。まだまだ、伸びシロのある中堅、若手選手がたくさんいます」と、まるで“次期監督”の所信演説のようなメッセージを口にした。そして「選手のみなさん、残り試合、来シーズンに、この悔しさをファンのみなさんとともにぶつけて、このマリンスタジアムのポールにチャンピオンフラッグを立ててください」と熱く語りかけた。 記者会見でも「セレモニーで言ったとおり、こんな順位(最下位)にいるチームじゃない」と再度繰り返した。井口は、すでに、ZOZOマリンを本拠地にする以上、ホームランではなく、二塁打、三塁打をベースにした機動力を使い、選手がダイヤモンドを次から次へと駆け巡るスピード感のあふれる野球でチームを再建しようという構想まで抱いている。ホワイトソックスで世界一になった「スマート・ベースボール」だ。 ダイエー入団当時の監督である王貞治氏も、セレモニーで流されたビデオメッセージで「メジャーに挑戦して4年間を過ごしたということは、これからの人生にものすごくプラスになる」と伝えた。 メジャー経験者の監督誕生となれば、史上初。旅立ちではなく、42歳の青年監督の始まりを祝福するかのように、外野スタンドからは真っ白な紙テープが美しいカーテンを描いていた。 井口は最後まで笑って場内を一周した。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)