吉沢亮「(劇中で)カツラをかぶった時は不安だった」 呉美保監督と舞台挨拶に登壇<ぼくが生きてる、ふたつの世界>
吉沢亮が主演を務める映画「ぼくが生きている、ふたつの世界」が9月20日の全国公開からロングラン上映中で動員数12万人を突破した。反響を受けて、11月17日に新宿ピカデリーにてロングラン上映御礼舞台挨拶が行われ、主演の吉沢、呉美保監督が登壇した。 【写真】吉沢亮、耳のきこえない両親の元で育った息子を演じる ■耳のきこえない母ときこえる息子の物語を繊細に紡ぐ 呉監督が9年ぶりの長編作品のテーマに選んだのは、コーダ(Children of Deaf Adults/きこえない、またはきこえにくい親を持つ聴者の子どもという意味)という生い立ちを踏まえて、社会的マイノリティーに焦点を当てた執筆活動をする作家・エッセイストの五十嵐大による自伝的エッセー「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」。 主演を務めるのは「キングダム」シリーズ、「東京リベンジャーズ」シリーズなどの話題作に出演している吉沢。本作では、耳のきこえない両親の元で育った息子・五十嵐大の心の軌跡を体現する。 さらに大(吉沢)のろう者である両親を演じるのは、母・明子役に忍足亜希子、父・陽介役に今井彰人。ろう者俳優として活躍する2人があふれんばかりの息子への思いを見事に表現。そのほかユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでんなど個性豊かな俳優陣が脇を固める。 ■吉沢亮「時間もかけたしたくさんの思いが乗った作品」 9月13日の宮城県先行公開から10週間、9月20日の全国公開から9週間というロングランを記録中で、動員人数12万人を突破。上海、バンクーバー、ロンドン、香港、サンディエゴ、シンガポールと世界の映画祭でも上映が続き、今年のTAMA映画賞では最優秀男優賞と特別賞を受賞した。その他映画賞でもノミネートされるなど国内外で高い評価を獲得中だ。 舞台挨拶冒頭、呉監督が「5回以上見て下さった人は?」と超満員の客席に問いかけると多くの手が挙がり、中には10回以上見たという観客も。この大反響に「すごい!」と思わず声が出た吉沢は「すごいことが起きているなと…。この作品には時間もかけたしたくさんの思いが乗った作品でもありますし、海外でもたくさんの方に見ていただいてうれしいです」と笑顔を見せ、「しかも映画賞の主演で男優賞を頂くのが初めてで。それがこの作品で本当に良かったです」と喜びをかみ締めていた。 呉監督も「信じられないというか、いろいろな映画祭に行かせていただいて、ずっと荷造りと荷ほどきをしている感覚。映画を作れたことだけでもありがたいのに、さらにご褒美を頂けてうれしい限りです」と声を弾ませた。 本作では手話を学びながら撮影に臨んだ吉沢。「手話を学ばせていただいたことで、手話の持ってる奥深さを感じました。この作品に携わらなければ知らなかったことばかりで、この作品は知らない人が何かを知るきっかけになれば良いなと思います」と願った。呉監督は吉沢のために練習用手話動画をネット上でいつでも見れるようにUPしたそうだが「その動画の再生回数がどんどん上がって。それくらい練習をし続けてくれたんだと思う」と吉沢の姿勢に感心していた。 ■呉監督「(キャスティングの際、吉沢は)真っ先に頭に浮かびました」 本作で9年ぶりに長編映画監督に復帰した呉監督。「育児をしながら、いつか映画を作れたらと思いながら日常を過ごしていました。吉沢さんはそんな中で注目していた俳優さんで、この企画をもらった時に真っ先に頭に浮かびました。ご快諾を頂けて、私にとっては最高の復帰作になりました」と胸を張った。 この日は、ロングラン上映の感謝を込めて、事前に映画公式Xに寄せられた質問に答えた吉沢と呉監督。一番好きなシーン、推しのシーンを聞かれた吉沢は、母親とパスタを食べている場面をピックアップ。「お母さんと大(吉沢)の今まで積み上げてきた距離感というか、溝が生まれた時期を経て全てから解放された瞬間で、ただただ親子になっている。完成した作品を見てグッとくるものがあった。手話も大変でテンポ感も含めて練習したので、そこが良い感じのシーンになっていたのもうれしかった」と述べた。 ■吉沢亮「(劇中で)カツラをかぶった時は不安だった」 呉監督は“泣けるシーン”として、上京し就職活動をする大の面接シーンを挙げた。好きな本を「ハリー・ポッター」だと適当に答えたりした面接帰りの場面だ。呉監督は「私には息子がいるので、その息子が都会に出た時を想像して重ねてしまいウルウル。間違いなく(面接に)落ちているのに、吉沢さんがニヤニヤしながら帰っていくのも上手い」。 これに吉沢は「僕も若い頃にオーディションで映画が好きだと言いながらも、深掘りされると何もできないという事も経験しているので…。深く考えずに好きと言ってしまう大の感覚は理解できたので、わりとすんなり楽しくできたシーンでした」と劇中の大に共感していた。 また劇中、昭和と平成の時代を表す工夫についての質問に呉監督は「前半はカラフルにして後半をブルーのトーンにしている」と回答。一方、吉沢は劇中で見せた絶妙な髪型に触れて「僕は昭和を知らない世代なので、大が20歳の時の髪型のカツラをかぶった時は『これ本当?成立しています?いけますか?』と不安だった」と今だからこそ話せるエピソードで場内を爆笑させていた。 最後に呉監督は「世界中、日本中でたくさんの方が見てくださっている中で、まだまだ上映も続きますので身近の大切な方に本作を薦めていただけたらうれしいです」とさらなるヒットを期待。吉沢も「公開から2カ月たった後でまたこうして皆さんの前に立てるのは貴重な経験で本当にうれしいです。これだけの方々に作品を愛していただき、中には10回以上見てくださる方もいたりとかして…。本当に一人でも多くの方々の心に本作が残って、皆さんの人生の中に寄り添う作品になってくれたらうれしいです」と本作を支える多くの観客たちに感謝していた。