「銀河が先かブラックホールが先か」長年の疑問に挑む新たな研究結果
銀河の中心部には巨大なブラックホールが存在すると考えられています。そうなると必然的に生じるのが「銀河が先か、ブラックホールが先か」という疑問です。これまでは銀河が形成された後にブラックホールが誕生したというのが定説でした。 今日の宇宙画像 しかし、ソルボンヌ大学のJoseph Silk氏などの研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による初期宇宙の観測データとシミュレーション結果を組み合わせた結果、銀河とブラックホールはほぼ同時に誕生し、ブラックホールが銀河の星形成を加速したとする研究結果を発表しました。これはウェッブ宇宙望遠鏡の観測で示された初期の銀河が予想より多く存在する可能性を裏付ける成果です。
■「銀河が先か、ブラックホールが先か」
「鶏が先か、卵が先か」は生物学に絡む哲学的ジレンマとしてよく知られています。これと似たような問題として、天文学には「銀河が先か、ブラックホールが先か」というジレンマがあります。私たちが住む天の川銀河を含む多くの銀河はその中心部に巨大なブラックホールがあると考えられています。では、銀河とブラックホール、どちらが先に誕生したのでしょうか? ブラックホールが先だとすると、その強大な重力によって周りの物質が引き寄せられ、やがて銀河が形成されたと考えることができます。一方で銀河が先だとすると、銀河という物質の集団内で誕生した巨大な恒星の重力崩壊によってブラックホールができたと考えることができます。どちらも尤もらしいため、順番に関する疑問が生じるというわけです。 これまでは「銀河が先、ブラックホールは後」という考えが定説でした。銀河の中心部にあるような巨大なブラックホールは、初期の宇宙でのみ形成されるような非常に巨大な恒星が起源だと考えられているためです。そのような恒星は “あっという間” に超新星爆発を起こし、中心核が重力崩壊してブラックホールが誕生します。このブラックホールが周りにある大量の物質を引き寄せたことで、現在のような巨大なブラックホールへ成長した、と考えられるためです。 この考えに基づくと、巨大なブラックホールの “種” は巨大な恒星の誕生と重力崩壊なくしては撒かれません。そして恒星はガスの塊から誕生すると考えられます。ガスの塊同士がお互いの重力で寄り集まったものが銀河の最初期の形態であると考えられることから、銀河はブラックホールに先駆けて誕生した、とこれまでは考えられてきました。