カニ求め復興の船出 輪島から30隻、発生10カ月漁本格化
●小型底引き組合・沖崎会長 ●不安乗り越え「一歩」 6日の解禁以降、悪天候のため出漁が見送られていた石川県沖のズワイガニ漁で、能登半島地震で大きな被害を受けた輪島港から8日未明、輪島市小型底引き組合所属の30隻が出港した。震災後初めての本格的な漁で、沖崎勝敏会長(50)は「いよいよこの日が来た。不安もあるが、復興への第一歩だ」と10カ月を振り返り、約50キロ先の漁場へ向かった。 【写真】出漁への思いを語る輪島市小型底引き組合の沖崎会長 7日午後11時ごろ、輪島港に隣接する県漁協輪島支所に船長らが集まって出港を決めた。各漁船にランプがともり、港内にはエンジン音が響き、船は続々と岸壁を離れた。風が強く、沖は波が荒れると予測され、見送りの家族からは「まずは無事に帰ってほしい」との声が聞かれた。 沖崎会長は地震が発生した元日、自宅で兄弟や親戚と団らんの時間を過ごしていた。自宅は一部損壊と判定されたが住むことはでき、漁船も少し修理すれば使えたが、輪島港は海底が隆起し、船を出すことができなくなった。 損壊した港湾設備は完全復旧に程遠いが、仮桟橋にベルトコンベヤーを2台備え、パワーショベルなどで船から魚の入った箱をつり上げて荷揚げするなどの工夫をし、水揚げの効率化を図る。 今年は震災や豪雨で道路状況が悪いため、金沢での初競りに間に合わせるには、例年より早い午後5時までに出荷を終える必要がある。沖崎会長は「不安は多いが、海に出ることができてうれしい。一生懸命やるだけ」と話した。各船は午後、順次帰港する予定。 県漁協によると、県内では輪島支所の30隻のほか、金沢、金沢港、内灘支所から計20隻、西海支所から15隻、加賀支所から10隻の計75隻が出漁した。すず、能都、小木の3支所は、高波で出港を見合わせた。 ●8日夜初競り 8日午後7時半、かなざわ総合市場と県漁協加賀支所で初競りが行われる。全漁船が出漁できないため、県産加能ガニを対象とした「蟹-1グランプリ」、雌の香箱ガニの「姫-1グランプリ」は中止する。