東京五輪メイン会場「新国立競技場」何をもめてるの?
2020年の東京五輪でメイン会場となる予定の新国立競技場ですが、デザイン、安全、費用などの面で論議が沸き起こっています。なぜでしょうか。 新国立競技場は、現在の国立競技場がある東京・神宮外苑とその周囲を拡張した11ヘクタールの敷地に、総工費1300億円をかけて建設が予定されています。収容人員は8万人以上で、現在の国立競技場の6万人を大幅に上回っており、総床面積(29万平方メートル)は五輪史上最大規模になるといわれています。
「巨大すぎる」との声も
争点の一つは、「こんなに大きな施設が必要なのか」ということです。建物が巨大すぎるため、計画通りに競技場が建設されると、聖徳記念絵画館へ続くイチョウ並木など、神宮外苑の景観が破壊されてしまいます。また、その奇抜なデザインも、周囲の景観にそぐわないという声が上がっています。 プリツカー賞、高松宮殿下記念世界文化賞などの受賞歴がある世界的建築家の槇文彦さん(85)も、産経新聞(10月9日付)のインタビューに応え、「無論、私は五輪そのものに反対なのではない」としたうえで、次のような疑問を呈しています。 「華やかな五輪の17日間の後も、競技場は50年、100年と世代を超えて維持管理し続けなければならない」 「なにしろ東京ドームの約1.5倍の人数、恒久的に8万人を収容できる巨大施設である。東京ドームならプロ野球試合をはじめ一定の需要が見込めるが、8万人を満たすパフォーマンス(ロックコンサートなど)はそう頻繁に行われるとは思えない」 槇氏はこのほか、周囲の道路アクセス能力などから、災害時に8万人の観客をスムーズに周縁に誘導できるのかといった、安全性の問題についても言及しています。 また、オリンピックのメイン会場という国家的なプロジェクトであるにもかかわらず、情報公開や国民の声を反映させる手続きが不十分な点についても疑問の声が上がっています。
総工費試算が2倍以上に膨らみ、計画変更
国立競技場を管理運営する独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)は、2012年3月、計画の内容を検討するため、「国立競技場将来構想有識者会議」を設置しました。メンバーは佐藤禎一元文部次官をトップに、猪瀬直樹東京都知事や竹田恒和日本オリンピック委員会会長ら政界、スポーツ界関係者ら14人で、建築関係の専門家は、建築家の安藤忠雄さんだけでした。