<伊豆大島の土砂災害1年>生活再建はまだ道半ば 島外避難した住民も戻ってきた
「噴火や津波、地震、台風による浸水などは想定していましたが、正直、土砂災害はノーマークでした」 東京都大島町の職員は、災害現場に立ってこう言いました。視線の先には、被害に遭った建物がリフォーム中です。そこには彼の同僚が住んでいました。「台所などは無事なのに、寝室だけがピンポイントで襲われたんです」。 2013年10月に発生した大島町(伊豆大島)の土砂災害から16日で1年がたちます。この1年で復興はどこまで進んだのか。伊豆大島を訪れました。
■観測史上1位の大雨を記録
2013年10月16日午前2時ごろ、台風26号による豪雨によって大島町の降水量は1時間で100ミリを超え、24時間では800ミリを超えるほどのものになりました。 大島町の過去20年間の月降水量は多い時で600~800ミリ程度でしたから、多い時の月平均降雨量に相当する雨が一晩で降ったということになります。この時の降雨は大島町の日最大降水量(ミリ)、日最大1時間降水量(ミリ)で観測史上1位を記録しました。 この豪雨で大島町に大規模な土砂災害が発生し、死者は36人、行方不明3人、重軽傷者22人(2014年2月3日時点)。家屋の全壊が50棟、半壊が26棟、一部破損が77棟という大きな被害を受けたのです。同日、政府は東京都大島町に災害救助法を適用しました。 当時、早い段階から台風接近が予想されていたにも関わらず、町長、副町長が共に島外に出張して不在だったことや、土砂災害警戒情報が東京都からFAXで送られた午後6時ごろには、町の防災担当者が帰宅していたことなど、町役場の対応の遅れが被害を拡大させたと大きく批判されました。 「当時、防災対策担当は1名で、総務課の下にある部署でしたので、きちんとした対応をするのは人的に難しかったということもありました。現在は、独立した防災対策室という部署になり、担当も3名に増員しています。役場の規模では、災害対応に何人も人員を常時配置することは難しいので、今では災害時は部署に関係なく、職員は庁舎に泊まりこんで24時間体制で対応することにしています」 それから1年、大島町では9月29日に「大島町復興計画」がまとまりました。 復興計画は「被災者の生活再建と産業の再建を果たし、安全・安心で魅力ある島を町民と行政とが協働と連携で実現していくためのまちづくり」を目指すものとして、策定されて、今後の町の復興の方針として活用されるようになります。