ロレックスの腕時計、史上最高の19モデルを(私的に)ランキング!
10. エアキング 第二次世界大戦のバトル・オブ・ブリテンで活躍した英国空軍パイロットに敬意を表して1945年に製作されたエアキングは、エアライオン、エアジャイアント、エアタイガーなど当時の「エア」シリーズのなかで唯一現存するモデルである(王冠のロゴを据えるロレックスが、王族の敬称にこだわりがあるのは驚きではない)。 それ以来、エアキングは歴史的に重要なモデルを求める人々にとって、ロレックスの入門機種としてポピュラーであり続けている。「現在に至るまで継続的に生産されているモデルであり、永遠のエントリーモデルとして人気を保っています」と、マイアミを拠点とするMenta Watchesのディーラー、アダム・ゴールデンは言う。エアキングは、ブランドのシグネチャーカラーであるグリーンのアクセントでロレックスらしさを存分に演出してくれる(少なくとも、この時計の最もクラシックなバリエーションではそうだ)。 9. シードゥエラー ロレックスのラインナップで代表的なダイバーズウォッチといえばサブマリーナーだが、シードゥエラーは本気のダイバーのためのダイバーズウォッチである。「サブマリーナーがスキューバダイビングを想定していたのに対し、これはジェームズ・キャメロンのようなマジな連中のための時計です」と、ゴールデンは言う。「ロレックスがサブマリーナーをよりクレイジーに仕立てたのがシードゥエラーなのです」 シードゥエラーは真の冒険家のための時計である。キャメロンは、このモデルのバリエーションであるディープシー チャレンジを携えて、地球上で最も深い場所であるマリアナ海溝の底まで潜った。 この時計がトップテン圏内に値するのは、ロレックスが誇るある側面が象徴されているからだ。それは、歴史的偉業の影には常にロレックスがある、ということである。例えば、英仏海峡を泳いだメルセデス・グライツの手首にはオイスター パーペチュアルがあった。エベレストに初めて登頂した遠征隊も同じだ。 シードゥエラーはまた、ロレックスのもうひとつの重要な戦略の恩恵を受けている。数十年にわたり、自社の時計を少しずつ完璧に近づけていくという戦略だ。シードゥエラーはサブマリーナーの延長にありながら、後者よりも深く潜れるようにするという明確な意図を持って作られている。浅く広くではなく、むしろ狭く深くを追求しているというのは、ロレックスの時計全般に言えることだ。 8. ミルガウス ミルガウスとこの次の時計については順位の入れ替えを繰り返していたが、最終的にミルガウスの判定負けとなってしまった。というのも、次のモデルとは異なり、ミルガウスは1956年に発表されて以来、製造と生産終了を繰り返してきたからだ。直近では2023年に製造中止となったミルガウスを今所有したいのであれば、セカンドハンド市場で見つけるか、オークションでロレックスのアーカイブ担当者に競り勝って最高の個体を手に入れるしかない。 しかし、ミルガウスがロレックスにとって重要な技術的発展をもたらしたのは事実だ。このモデルは、強い磁場の影響を受けない時計を必要としていた科学者のために特別に設計された。歴史を知る挿話としては素晴らしいが、この耐磁技術は現在の優れた時計には標準装備されているものだ。これも、ミルガウスが順位を落としてしまった要因である。 それでも私がミルガウスを贔屓するのは、ノリのいいデザインが好きだからだ。ヴィンテージ品のハニカム文字盤は最高だし、エキセントリックな(そしてしばしば賛否両論を巻き起こす)稲妻形の針も大好きなのだ。 7. オイスターおよびオイスター パーペチュアル 先に進む前に、ひとつはっきりさせておきたいことがある。私がここで言っているのはオイスター パーペチュアルという時計のことであって、ロレックスの同名技術のことではない。「オイスター パーペチュアル」という言葉は実際、ほぼすべてのロレックスに記されている。 「オイスター」は1926年に生まれたロレックスの防水ケースのことであり、「パーペチュアル」は1931年に開発されたロレックス独自の自動巻きムーブメントを指す。これら2つの単語は1945年に初めて時計の文字盤上で組み合わされ、同社の歴史の中でおそらく最も神聖なフレーズを構成してきたと言えるだろう。 一方、モデルとしてのオイスター パーペチュアルは、ロレックスの歴史で最も重要な時計のひとつである。とはいえ、このランキングの先で紹介する時計のような、長く続くカルト的な魅力は持っていない。しかし、現代のオイスター パーペチュアルが高く評価されるべき点は、これが同社が最も遊びを施してきたモデルのひとつであり、カジュアルなコレクターが最も親しみやすい時計であるということである。 ここ10年でリリースされてきた数々のオイスター パーペチュアルを思い返してほしい。文字盤にシダのパターンをあしらったバージョンや、70年代にインスパイアされたカラフルな文字盤のシリーズなどがあった。後者にインスピレーションを得たマルチカラーの“セレブレーション”デザインは、今ではかなりのハイプを惹起するアイテムとなっている。もとは定価76万円ほどで売られていたものが、今や300万円で取引されることもある。 振り返れば、よりファンキーで愛すべき時計もオイスター パーペチュアルから生まれたものが多い。ケースバックが膨らんでいることからその名がついた、コレクター垂涎の「バブルバック」もオイスター パーペチュアルである。私の永遠の憧れのひとつである、50年代の「スターダイヤル」がよくあったのもこのラインだ。 注:我々が完全に理性を失わないためにも、オイスター プレシジョンとオイスターデイトもこのグループに含むことにした。 6. エクスプローラーおよびエクスプローラーII オリジナルのエクスプローラーは、初のエベレスト登頂の成功を受けて誕生した頼もしい時計だ。1953年、遠征隊のテンジン・ノルゲイとエドモンド・ヒラリーはロレックスのオイスター パーペチュアルを携えてエベレスト登頂に挑んだ(このモデルは現在コレクターの間で「プレエクスプローラー」と呼ばれている)。 ロレックスはこの偉業に応え、同年エクスプローラーを発表した。エクスプローラーの素晴らしいところは、発売から70年経った今もほとんど変わらず、途切れることなく生産され続けているということである。ヒラリーが50年代に持っていたであろう時計と同じ36mmの文字盤を備え、オフィスからディナーデート、世界有数の脅威的な山の頂上まで、どこでも着用できるのが魅力だ。エクスプローラーひとつで、ロレックスがフィールドウォッチと呼ばれるカテゴリーで力を誇示するのに十分な機能を備えている。 このリストを様々な専門家にぶつけたところ、エクスプローラーIIは彼らの間で最も順位にばらつきのある時計だった。最下位近くにつけた人もいた。大きな針とGMTムーブメントを備えた時計、それも洞窟潜水などという滑稽なほど限られた用途のために設計されたものを、どこまで真面目にランク付けできるのか、というのだ。一方、Tropical Watchのヤツェク・コズベックのように、このモデルをオリジナルのエクスプローラーよりも高く評価する人もいた。なぜかといえば、人々が実際に購入する時計だからだ。 エクスプローラーIIについて言える最もクールなことは、これにロレックスのパワーが凝縮されているということだろう。洞窟探検用の時計を、業界全体でトップセラーにできるようなブランドがほかにあるだろうか? ないはずだ。この時計を私が上位にランクした理由は、用途は特殊かもしれないが、ロレックスがその目的のため真に素晴らしいデザインを実現したからである。目を引くオレンジの針も、この時計に十分な魅力を与えている。 5. GMTマスターおよびGMTマスターII ここから上にランクしたモデルのほとんどは、どれがトップに位置してもおかしくないものだ。「個人的には、GMTマスターをサブマリーナーより上位にしますね」と、ラムディンは言う。サブマリーナーの単刀直入な美しさは現代のスポーツウォッチを特徴づけるものだが、GMTマスターではもっと多くの楽しみ方ができるからだという。 「GMTは、サブマリーナーで培われたスポーツウォッチの基本的なアーキテクチャーを用いながら、複雑さを加え、厚みを減らすことで、より使いやすい時計に仕上げています」と、ラムディンは言う。この時計のバリエーションは非常に多様であり、ラムディンの説明も次第に熱を帯びてくる。「GMTはマットな文字盤でも光沢のある文字盤でも、スティールでもツートーンでもゴールドでもかっこよく見えます。黒と茶の“ルートビア”ベゼルでも、“ペプシ”ベゼルでも“コーク”ベゼルでも、オイスターブレスでもジュビリーブレスでもかっこいい」 GMTの見た目のよさは明白だが、この時計は人類の発展における非常に重要な要素、すなわち民間航空の開始と結びついている。GMTは、パンアメリカン航空のパイロットとそのクルーが、24時間表示の秒針によって2つの異なる時間帯を把握できるよう特別に開発された。「この時計は、世界がより小さく、より統合された場所になることと不可分でした。それは本質的に、ダイバーがより深く潜れるようになるなどということに比べ、人間的なレベルでずっと意味のあることです」と、ラムディンは言う。 私がGMTマスターをGMTマスターIIとひとくくりにしているのは、この後継モデルが先代モデルとあまりによく似ており、切っても切れない関係にあるからだ。改良版は1983年にデビューしたもので、主な違いはムーブメントが高性能になり、時計のほかの機能を邪魔することなく時針を調整できるようになったことだ。 4. デイデイト もしこのランキングが、私が所有することを夢想するロレックスの腕時計リストに過ぎないとしたら、デイデイトがトップの座を占めることだろう。2022年、プラチナ製のRef.228236を試着する機会を得た私は、編集長に大喜びでこうメッセージを送った──もう時計業界は新しい時計を作るのをやめてもいい。これが完成形なのだから。 デイデイトは、ロレックスが発明に寄与した完璧な中間地点に位置する。この時計でよく目にするイエローゴールドのデザインは、日常の着用にはやや派手であり、厳密にはスポーツウォッチとはいえない。他方、厳密にはドレスウォッチでもないが、スーツによく似合う。この時計は、時刻、日付、曜日といった必要な情報を、そしてそれのみを教えてくれる。派手だが実用的だ。 デイデイトはロレックスの最重要モデルのひとつである。ロレックスだけでなく、時計業界全体にとって初めての試みがいくつもあった。デイデイト以前には、7つの曜日を記した時計はなかった。また、「プレジデント」という予言的な名前のブレスレットも、リンドン・B・ジョンソンをはじめとする大統領らが実際に着用する前に発表された。 私の中で、このモデルは「トップに登り詰めた」人物を象徴する時計となっている。デイデイトが私にとって魅力的なのは、ダイビング用のサブマリーナー、レース用のデイトナ、登山用のエクスプローラーなど、スポーツの頂点に立つ人々のためのモデルを作ってきたロレックスの戦略をビジネスシーンに応用したからだ。ジョンソン元大統領からウォーレン・バフェット、さらには『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の主人公トニー・ソプラノまでが愛用している。 3. デイトジャスト ロレックスが約80年前に発表したデイトジャストは、現在もブランドの大黒柱であり続けている。ブランドのラインナップの中で最もセクシーな名前ではないかもしれないが、あくまで基本に忠実で頼りがいのある、業界のトッププレイヤーだ。今日に至るまで、デイトジャストはロレックスのベストセラーモデルであり続けている。リストにはもっと魅力的なモデルがあるかもしれないが、GMTマスターやデイトナを手にする前に、デイトジャストからその道に入ったコレクターも多い。 とはいえ、デイトジャストがここまで上位にランクインしたのにもちゃんと理由がある。午前0時に何もしなくても自動的に日付が切り替わるという、現代ではスタンダードとなった複雑機構がデビューしたのがデイトジャストなのだ。この時計はまた、超堅牢なオイスタースタイルに代わるエレガントなジュビリーブレスレットをロレックスの世界に導入したりもした。 2. コスモグラフ デイトナ 上位のモデルはいずれも、すべてのカテゴリーで高得点を獲得した優等生だ。最も人気のある“ロレックス”というだけでなく、最も人気のある“時計”の座をこの次のモデルと争っているのがデイトナである。もしこのランキングの基準が、ある腕時計を「入手の望みは薄くてもほしい時計のリスト」の上位に入れている人の数だったとしたら、デイトナは断トツのトップとなるだろう。 この時計は一流中の一流であり、現代ロレックス・コレクションの指標である。イエロー&ホワイトゴールドの“ル・マン”、虹色のサファイアをあしらったバージョンなど、ロレックスが目を見張るようなスペシャルエディションを発表しようというときは、デイトナにダイヤルを合わせる。 しかし、デイトナは単なる人気投票の勝者ではなく、ロレックスにとっても業界全体にとっても歴史的な重みがある時計だ。先行モデルは存在したが、現在ではロレックスの全モデルで唯一のクロノグラフがデイトナである。このモデルは1963年に登場し、オメガのスピードマスターやタグ・ホイヤーのカレラといった象徴的なモデルとポールポジションを争った。デイトナは成功を収め、ロレックスとモータースポーツとの結びつきを一手に担うモデルとなった。 時計コレクションの世界において、デイトナほど重要なモデルはないかもしれない。これまでに売買されたヴィンテージ腕時計で最も高額なのはやはりデイトナであり、かつてポール・ニューマンが所有していたものである。この時計は2017年に1780万ドルで落札され、彼が着用していたRef.6239 “Paul Newman”は、世界で最も所有欲を刺激する時計のひとつであり続けている。 「(ニューマンは)自分でも知らないうちに、デイトナを今日のステータスに押し上げたきっかけとなり、ロレックス収集のブームを引き起こしました。彼はこの時計を15年も着けていましたからね」。この時計の売却を担当したフィリップスのオークショニア、オーレル・バックスは当時私にそう語った。「私はこれをロレックス収集におけるアダムとイブの瞬間と呼んでいます」。デイトナのバリエーションは今後、何世代にもわたってコレクター心をくすぐり続けるだろう。 1. サブマリーナー 正直なところ、1位には何かサプライズを用意したかった。「なぜスペースドゥエラーがロレックス史上最も重要なモデルなのか」とか。残念ながら私も常識外れなほうではないので、導き出した答えも街で呼び止めたほとんどの人から返ってくるようなものである。サブマリーナーは最も重要なロレックスというだけではない。おそらく史上最も重要な時計である。以上。 サブマリーナーの文化的、歴史的な魅力は業界において比類のないものだ。「おそらく世界で最も知られた時計であり、ブランドからの連想が最も働くモデルでしょう」と、ラムディンは言う。「目を閉じて腕時計を思い浮かべるとしたら、何を思い浮かべますか?」。そう、ロレックスのサブマリーナーである。「サブが世界で最もアイコニックな時計です」と、ゴールデンも同意する。 初代ジェームズ・ボンドはサブマリーナーを着けていた。ロレックスが初めて出版した本はサブマリーナーについての書籍だ。ロレックスが1953年にこのモデルを発表したとき、それはロレックスだけでなく時計業界全体の軌道を変えた。サブマリーナーは、スポーツウォッチというカテゴリーを広義に定義するのに寄与し、それぞれの目的にフォーカスしたツールウォッチを作るというロレックスの方向性を定め、それが今も継続している。 仮にサブマリーナーを探し求めることに一生を捧げ、すべての貯金をつぎ込んだコレクターがいたとしても、その深い海の底へと辿り着くことはできないだろう。そこには無数のバリエーションが存在するからだ。頑丈なステンレススティールのサブマリーナー。軍用に設計されたいわゆるミルサブ。暗号資産で儲けた億万長者だけが入手できるような、ダイヤモンドをちりばめたホワイトゴールドのサブマリーナー。あらゆるタイプの人に向けたサブマリーナーがあるわけだが、あらゆるタイプの人がほしがっているのだから、それはいいことなのだろう。 Special thanks to Watches of Switzerland, James Lamdin, Adam Golden, Jacek Kozubek, and Eric Wind and Charlie Dunne of Wind Vintage From GQ.COM By Cam Wolf Translated and Adapted by Yuzuru Todayama