「富士山が見えない」国立市富士見通り沿いの完成間近のマンション“解体”へ 周辺住民の反対が理由?
「この度、弊社は、本マンション新築事業を中止、解体することにいたしました」 東京都国立市で、完成間近の10階建てマンションが急きょ解体されることになりました。 【写真20枚】「富士山が見えない」完成間近のマンション“解体”へ を写真で見る 完成すれば、大きなガラス窓から富士山を眺望することができた分譲マンションに、一体何があったのでしょうか?
購入者は困惑…入居1カ月前に“解体”
「めざまし8」が入手したのは、大手住宅メーカー・積水ハウスが建設した分譲マンションのパンフレット。マンションの所在地は、東京都国立市で、JR国立駅から徒歩10分の場所。 間取りは2LDKと3LDKがあり、価格は7299万円からとなっています。 「国立富士見通りに10年ぶりの分譲マンション」と記載されており、富士山を臨む眺望で注目されていました。 来月にも購入者への引き渡しが始まる予定でしたが…。 田中良幸 情報キャスター: こちら工事用の白いパネルが貼られていますけど、そこに真新しい貼り紙があります。見ると「事業中止のお知らせ」で、その右はもうすでにこの建物の解体に向けた準備のお知らせも書かれていますね。 入居予定だったマンションの購入者を取材すると、聞こえてきたのは困惑の声。 マンション購入者: 2024年7月に入居予定だったのに…、今の家を売り払う手続きをしているので、どうしたらいいのか。 現在住んでいる家はすでに売却が決まっているため、突然入居できなくなり、“帰る家”がなくなってしまうといいます。さらに、購入者が取り壊しの連絡を受けたのは、わずか1週間ほど前のことでした。
「周辺への影響に関する検討が不十分」
建設・販売を行った「積水ハウス」は、めざまし8の取材に対し「法律や条例、構造など問題は一切ございません」とした上で、「本件建物の周辺への影響に関する検討が不十分であったことが判明したため、現状の事業を継続することはできないと判断いたしました」と回答しました。 「周辺への影響」とは、どういうことなのか、それは今回のマンションが建てられた場所に関係していました。 田中良幸 情報キャスター: JR国立駅からちょうど、南東に延びた片側一車線のこの道路、富士山が奥に見えることから「富士見通り」という名前です。 マンションが建ったのは、「富士見通り」沿いの場所。 そのため、一部の地域の人が富士山を見た際、マンションによって半分ほど隠れてしまう状態になってしまったといいます。 マンション建設に反対の住民: (マンションが)できたことによって、「国立駅から見ると半分ぐらいしか見えない」と表現をする人が多いですよね。国立といったら景観を大事にする町ですからね。その景観に魅せられて、国立に住んでいるわけですから。その景観が損なわれるというのは、それは残念なことだと。 マンション建設に反対の住民: 見事にきれいなの。富士山がもう目の前で。「あっ今日は雪がたくさん降ったのね」とか。大変美しいです。(マンション建設は)寂しいですよね…残念で。 さらに、景観以外の不満を口にする住民も…。 マンション建設に反対の住民: 結構うちもあのマンションの北側の戸建てに住んでいるので、日当たり悪くなるなっていう心配がすごくありました。 マンション建設に反対の住民: ちょうど午前中…ほとんど午前中いっぱいかな。マンションに隠れちゃって。周りは晴れているんだけど、結局、日が当たらないので、結構寒い状態。 12時過ぎると、マンションの横に太陽が移動するので、太陽が出てきて、家の中あったかくなるんだけど、正直これ、一生だと嫌だなと思いましたね。 マンションが建った影響で、日当たりが悪くなったと訴える人も。 積水ハウス側が、住民説明会で配ったマンション建設に関する資料を見てみると、当初は11階建てにする計画でしたが、検討の末、10階建てに変更。 さらに、その後、同じ10階建てでも、より低くなるように仕様を変えたといいます。 仕様変更を行ったにもかかわらず、解体となってしまったマンション。 なぜここまで決断が遅れてしまったのか、その原因を不動産コンサルタントの長嶋修氏はこう推測します。 不動産コンサルタント 長嶋 修氏: 建物が完成して引き渡し直前なのに解体するということは異例の事態なので、企業としても議論、ためらいがあったのではないでしょうか。 あるいは、住民との折衝の中で本来なら手付金の倍返しというのがルールなんですけども、もう少し時間がたってしまうと、手付金の倍返しに加えて、違約金も払わなくてはいけないギリギリのタイミングだったのだと思います。 ――手付金を「倍返し」してでも守りたかったものとは? 結局、あくまでも合法的に建築確認を通っていることですから、しかし現実的には建築確認が下りた後の住民との折衝というのは、どこのマンションもやるものなんです。とはいえ、100%の賛同というのは得られないので、どこかで見切り発車をする。今回もそのようなケースで建築が始まっていったと思うのですが、この後入居者が実際に住んだ後に、反対運動が続いてしまう、あるいは訴訟が始まるということになると、レピュテーションリスク、マンションのイメージが良くない、ひいては企業としてのイメージが悪くなることを恐れたのかもしれません。 購入者に対して、積水ハウスは「ご迷惑をお掛けしたことをお詫びするとともに、出来る限りの対応を行ってまいります」と話しています。 (『めざまし8』 2024年6月10日放送より)
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