GeForce RTX 50だけではない! 社会がAIを基礎にしたものに置き換わる? 「CES 2025」で聴衆を圧倒したNVIDIAの最新構想
小型AIコンピュータ「Project DIGITS」にも注目
この基調講演でもう1つ注目を集めたのが「Project DIGITS」と呼ばれるコンパクトなAIコンピュータだ。本製品は20基の高効率コア(Cortex-X295×10基+Cortex-A725×10基)を備えるGrace CPUに、Blackwell GPUを接続したSoC「GB10 Grace Blackwell Superchip(GB10)」を備えている。FP4精度でのピーク演算性能は1PFLOPS(1000TFLOPS)だ。メモリは128GB(LPDDR5X規格)を備えているが、CPU/GPU共用の「ユニファイドメモリ」とすることで、CPUとGPUのデータ共有をしやすくしている。 この構成は「Apple Silicon(Apple Mプロセッサ)」と似ており、ある意味でのカウンターともいえる。Apple Siliconと異なるのは、Apple以外のコンピュータメーカーでも採用できる点に他ならない。 データセンター向けに提供するNVIDIA GB200 NVL72は、CPU1基+GPU2基を36セット搭載することでピーク演算性能は20PFLOPS(スパース利用時は40PFLOPS)というモンスター級の性能を備えるが、その分サイズはとても大きい。 その点、GB10は「20コアCPU+Blackwell GPUを備えるSoC」1つが最小単位なので、個人や小規模研究所でも導入しやすいというメリットがある。ファン氏の言葉を借りれば、「Project DIGITSを利用すれば、誰でも容易にAIの開発を始められる」。 それでいて、Project DIGITSはGB200を含むNVIDIAの大規模スーパーコンピュータ環境とソフトウェア的に互換性が保たれている。これも強みだ。
「CPUからGPU中心」へ そして「認知AI」から「フィジカルAI」へ
NVIDIAの発表で印象的なことは、圧倒的な高性能GPUチップを発表するにとどまらず、新しい領域のアプリが生まれてくるソフトウェアの土壌をきちんと整備していることだ。 例えば同社はWindows 11とWSL(Windows Subsystem for Linux)環境の「RTX AI PC」を対象に、推論アプリケーション開発基盤「NIMマイクロサービス」を簡単に組み込めるキットを提供する。 このキットを使うと、開発者はBlack Forest Labs/Meta/Mistral/Stability.AIなどが提供するLLM(大規模言語モデル)や画像生成モデルなどを利用しやすくなり、PCに組み込むAIエージェントの開発をスムーズに行える。 また、ファン氏は「フィジカルAI」と呼ぶ、自動運転車やロボットなど物理的に人間社会と関わるAIの進化にも触れた。「Cosmos」は、そのために構築されたAI基盤だ フィジカルAIとは、自動運転車やロボットといった社会に物理的に存在するものに組み込まれたAIのことだ。いずれ、社会のさまざまな製品がAIを基礎にしたものに置き換わると予言しているようにも感じられる。 AIロボットや自動運転の構築では、高精度な学習データが大量に必要となるが、「Cosmos World Foundation Models(WFM)」はシミュレーション環境から自動でデータを生成する機能を持ち、効率的なAIエージェントの開発を支援する。 PCのソフトウェア開発は「CPUを動かす従来型コーディング」から「GPUがニューラルネットワークを実行するAI型コーディング」への移行が加速し、人々の仕事や娯楽、さらには社会インフラの根底を変えていく可能性が高い。 30年前の「NV1」や1999年の「■省電力性を向上している NVIDIAはGPUとAIの“両輪”を使いこなすことで、PCやデータセンター、組み込みシステムを問わず、今後さらに深い領域へと進出しようとしているのだ。
ITmedia PC USER