孫正義の「しょんぼり反省」は演技?あえて感情を表に出す“超合理的な”理由
本当はとても自信があって、何度も訪れた窮地の中でも「自分なら何とかできる」と思っているはずです。しかし、その姿を世間に見せても一向に支持を得られないどころか、むしろ批判されるかもしれません。それよりも、しょぼんとして反省した態度を示すほうが、まだ世間の支持は得られるでしょう。 要するに、上り調子だけの人は嫉妬されやすいのです。むしろ、好不調の波がある方が人気者になりやすい傾向があります。孫さんが意図的かどうかは別にして、感情を表に出すことの意味をよく理解していると思います。 井上 私も薄々そう感じていました。自信はあっても、時には反省の姿勢も示しておく必要はあるでしょう。ところで、孫さんが川邊さんの前で弱音を吐いたところを見たことはありますか? 川邊 孫さんは側近たちとの会議を非常に重視しています。通常の会議なら、参加者の数は多くはありませんが、だいたいは複数人で行います。そのため、私が孫さんと本当に2人きりで話したことは、わずか3回しかありません。 そのうちの1回が、2019年ごろにヤフーで行った「令和の特集」というインタビュー企画です。孫さんのインタビュアーが都合で来られなくなったため、急遽私が代理でインタビューをすることになりました。 残りの2回は、2021年6月のソフトバンクグループ(SBG)の取締役就任を孫さんから打診されたときと、2023年6月にSBGの取締役を退任するときです。 2回目に2人きりになったときに、詳細は語れませんが、孫さんが落ち込んでいることについて話を聞きました。私は20年以上孫さんと関わってきましたが、落ち込んだ様子を目撃したのはその1回だけです。それ以外は、反省はしていても、本当に落ち込んでいる姿を見たことがありません。 井上 川邊さんほどの能力があれば、自分で会社を立ち上げて経営すればいいのにと思う人もいるでしょう。なぜ川邊さんは自身の会社を合併させて、孫さんとヤフーで働くことを選んだのでしょうか?