世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか?(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■家計管理はあえて大雑把でいい。
夫:なるほど……これなら食費と雑費でそれくらいにはなります。 妻:差し引きの21万はお小遣いですか? さすがにこんなに使っていないと思うんですが……。 中嶋:もちろん、毎月の変動はある程度あると思いますが、他に貯蓄したり投資にお金を回したりをしていなければ、これくらいの数字で間違ってはいないと思います。差し引きの21万はお二人のお小遣いだけでなくて、あとは企業でいう特別損失、たまにある臨時的な支出も含んでるんですね。家具家電の買い換えとか、結婚式のご祝儀とか、旅行とか。あとは結婚記念日にちょっと高めのレストランで食事とか日常的ではない食事なんかも含まれます。 中嶋:そういう特別支出的な支払いは夫婦どちらのお小遣いでもなかったりするので、計算から外れていて、そんなに使ってる?とビックリされることは珍しくないんです。というわけなので、お二人くらい収入が高いご夫婦なら生活費も生活費以外の支出もそんなに変な数字では無いと思いますけど、どうでしょ? ーー家計の計算は大雑把でいい。どれくらい大雑把で良いかというと、最終的には生活費と生活費以外、この二つの項目に集約される。この夫婦なら生活費が45万、生活費以外の支出、お小遣いと特別支出が一ヶ月あたり平均すると21万となる。 妻:……ですね。無駄遣いをしてる意識はそんなに無かったんですけど、クレジットカードの引き落とし額とか考えるとこれくらいは使ってますね。 夫:はい、僕も納得しました。それくらいだと思います。節約というか削れそうな気はしますけど、さっきのお話だとそれは考慮しない方がいいんですか? 中嶋:奥様もおっしゃっていたように無駄遣いはしてないと。多分そうだと思います。無駄と分かっていたらそもそも買いませんから。家計に明確な「無駄使い」って無いんです。それなりに必然性があって払っているモノばかりだと思いますので。 中嶋:節約については節約したらダメとか節約しなくて良いという意味ではなく、大幅に節約が出来る前提で購入プランを考えるのは危ないからしない方がいい、という意図です。 妻:やっと納得しました。リスクの観点から楽観的でなく厳しめに考えるということですね。この数字で計算して大丈夫です。 ーー生活費は企業で言う「固定費」となる。企業会計では売上がゼロでも出ていく費用が固定費と定義されるが、家計に置き換えると「生きている限り必ず出て行くお金」となる。食費や光熱費を変動費と勘違いしているFPは多いが、どちらも万単位で削ることは難しい。家賃や教育費も簡単には削れない。つまり生活費は全て固定費だ。 「生活水準は一度上げると収入が減っても下げられない」とよく言われるが、それは贅沢がクセになるからといった気分や感覚の話ではなく、家計の大半を占める支出が「安定していて削りにくい」性質をもつ固定費だから、つまりは生活費だからだ。 企業が店舗閉鎖や工場閉鎖、解雇などのリストラで固定費を削るのは、業績が大幅に悪化してやらざるを得ない時、やらないと倒産してしまう時だけと考えると、家計のリストラ=固定費の削減が極めて難しいことは分かって貰えるだろう。 住宅の予算を検討する際に節約を前提としないことは鉄則と言える。だからこそ住宅購入の話をする際は家計の話を必ず最初にする、という説明になる。 相談の中で説明したように住宅購入の予算を考える際は年間の貯金額、家計の収支が最も重要な数字となるため、まずは貯金額を確定させた。物件価格は極めて高いが貯蓄体質で年間350万円を貯金している伊東夫妻は9540万円の湾岸タワマンを買えるのか? 続きは「世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その2」をご覧頂きたい。 中嶋よしふみ FP、シェアーズカフェ・オンライン編集長 ※筆者はFPとして生命保険や住宅の販売を行わず、住宅ローンも取り扱わず、金融機関や不動産会社のセミナーや広告等の依頼を全て断り、有料相談のみを行うFPとして活動しています。相談・アドバイス・記事執筆にあたってこれらの企業と利害関係や利益相反はありません。 ■相談モニター募集! 相談記事に出ていただけるご夫婦を募集しています。相談はFPの中嶋よしふみ本人が対応します。モニターの謝礼として無料で相談を提供します。 ※記事は個人が特定されないように配慮します。 ■応募条件 ・結婚されているご夫婦で住宅購入を検討していること。 ・ご夫婦そろってズームで受講頂けること。 相談モニターの詳細と応募方法はシェアーズカフェ・オンラインの応募ページをご覧ください。