KDDIが“ローソン経営”で狙う「シナジー」の中身 5000億円投資に見合うリターンを得られるのか
「最も活用しているポイント」についても、Pontaポイントは8.2%にとどまり、楽天ポイント(33.7%)をはじめとする競合キャリアの数字を下回った。消費者にとって身近な存在であるコンビニを本格的に活用することで、自社の経済圏をどれだけ広げられるかが今後の焦点となる。 本業である通信回線の拡大に向けても、いくつか新たな取り組みが示された。 KDDIが展開するオンライン専用ブランド「povo」について、「サブ回線」での利用を想定したeSIMを2024年度中に全国のローソンで販売する。髙橋社長は「(サブ回線について)ドコモユーザーも、ソフトバンクユーザーも、あらゆるキャリアのユーザーでセットアップができて、速度制限の問題も解決する」と強調した。
コンビニを通じた携帯電話事業の拡大に向けては、店舗に端末や販売員などを置かない限り、来店者に機種変更や他社からの乗り換えを促す本格的な販促活動はハードルが高い。 一方、大規模な通信障害が近年相次いだことなどから、主回線だけでなくサブ回線を持ちたいという消費者のニーズもあり、サブ回線を追加する気軽な形であれば、一定の利用者獲得につなげることは期待できる。 さらにpovoのデータ容量について、ローソンに来店すると1回につき100MB(月の上限は1GB)を無料で提供する施策も2024年中に開始すると発表した。消費者がサブ回線を取得するインセンティブを示しつつ、自社ユーザーのローソン来店を促して店内でのついで買いにもつなげる狙いだ。こうした回遊性を高める仕組み作りは、今後KDDIとローソンの相乗効果を発揮していくうえで鍵を握りそうだ。
■5000億円投資のリターンなお見えづらく KDDIによるローソンへの出資が発表された当初、投資対効果への不透明感などから懐疑的な動きを見せていた株式市場は、一連の発表を一定程度好感したようだ。会見の翌9月19日には、KDDIの株価は前日比2%弱高の4813円に上昇した。 ただ、2月の提携発表以降、KDDIの株価は低迷し、6月には一時4100円台まで下落していた。現在の株価は、提携発表直前と同じ水準にようやく戻った状況にある。