KDDIが“ローソン経営”で狙う「シナジー」の中身 5000億円投資に見合うリターンを得られるのか
ローソンの店舗運営を強力に支援する姿勢をみせたKDDIだが、TOBに約5000億円もの巨費を投じた以上、気になるのは自社事業とのシナジーだ。 近年、通信キャリアの本業である個人向け通信の伸びは頭打ちとなりつつあり、各社にとって金融など非通信事業強化が経営課題だ。国内だけで1万4000超に及ぶローソンの店舗網を活用することで、KDDIにどのようなメリットがもたらされるのか。 この日、KDDIが自社事業に関連して具体的に示した唯一の指標は、「auスマートパスプレミアム」の会員数を1500万から2000万に拡大させる、というものだった。
同サービスは月額548円を支払うと、映像や音楽、書籍といったエンタメコンテンツを利用できるほか、ローソンや映画館で使えるクーポンなどを取得できる。KDDIはこのサービスを今年10月2日から、「Pontaパス」という名称に刷新すると発表した。会員数の拡大に向けて、ローソンやauサービスで利用できる共通ポイント「Pontaポイント」の還元を強化したり、店舗の商品で使えるクーポンを充実させたりする施策も展開する。
会見で目標達成の時期は明示されなかったが、単純計算すれば、会員数が500万増えると年間330億円程度の売り上げになる。これが、KDDIが現状見込む数値的な「シナジー」といえそうだ。 ■ポイント経済圏で巻き返せるか もっとも、新たな名称で「Ponta」を前面に打ち出したことからもわかるように、同サービスの拡大を図る真の狙いは、グループの「ポイント経済圏」を強化する点にあるといえるだろう。 通信キャリアは、携帯電話とポイント還元を組み合わせて提供する新プランを相次いで投入するなど、自社サービスなどを活用した顧客の囲い込み競争が激しさを増している。
「Pontaポイント」は、KDDI、三菱商事、ローソンの3社で6割超出資する「ロイヤリティ マーケティング」が運営し、会員数は約1億1800万人に上る。ただ、「経済圏」という意味では、競合と比べるとその存在感は見劣りする。 MMD研究所(東京)が2024年7月に実施したアンケート調査では、ポイント経済圏のメイン利用者が「意識している経済圏」について、「au」と回答した人の割合は15.8%で、「楽天」(43.9%)、「PayPay」(29.8%)、「ドコモ」(23.7%)などの競合に大きく水をあけられている。