山崎和之・国連大使「戦後で一番厳しい情勢」 日米安保、露朝軍事協力へ核抑止「効果」
【ニューヨーク=平田雄介】国連安全保障理事会で日本の非常任理事国の任期が31日で終了するのを前に、山崎和之国連大使が産経新聞の取材に応じた。山崎氏はロシアのウクライナ侵略や中東危機に対応した2年間の任期を「第二次大戦後、一番厳しい安全保障情勢」と振り返った。また、ロシアと軍事協力する北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、日米安全保障条約を念頭に「核抑止の効果」に言及。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞を機に、一部で盛り上がる日本の核兵器禁止条約加盟や締約国会議へのオブザーバー参加には慎重な姿勢を示した。 安保理は今年も、ウクライナ侵略や中東危機、北朝鮮の核・ミサイル開発に実効性のある対応をとれず、「機能不全」が続いた。他方、9月の国連「未来サミット」では、首脳レベルで初めて安保理改革の「緊急の必要性」を明記した協定が採択され、改革の機運は高まっている。 山崎氏は、来年の国連創立80年を前に「改革機運の高まりを現実に落とし込んでいく」と強調。安保理を離れた後も、国連総会などの場で途上国の開発や人道支援に関する議論を主導し、多くの国連加盟国の信頼を得て日本の常任理事国入りにつなげていきたい考えだ。 米国は、日本を含む常任理事国の拡大を支持しながらも、新たな常任理事国には拒否権を与えない方針。山崎氏は「新しい常任理事国は(現在の5カ国と)同じ扱いをされるべき」と述べる一方、「新しい常任理事国は当面、拒否権行使を控え、15年後をめどに全ての常任理事国の拒否権を見直す」との立場を表明した。 山崎氏はまた、来年1月に返り咲くトランプ次期大統領の下で米国の国連への関与が弱まるとみられていることについて、「一国主義の印象があるが、第1次トランプ政権下で国連予算はあまり減らなかった」と指摘。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連児童基金(ユニセフ)など人道機関への貢献は「第1次政権時も一貫して大きかった」と振り返った。 ただ、第2次政権の対応が実際にどうなるかは「予断できない」と説明。国際刑事裁判所(ICC)が今年5月、戦犯容疑でイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出したことを巡り、ICCに制裁を科そうとする「米国内の議論を注視している」と述べた。