その「ストレス」使い方が違います―つらいストレス関連症状は漢方薬で緩和の可能性
◇同じストレッサーでも人によって異なる現れ方
同じストレッサーを受けたら誰もが同じ反応を示すわけではなく、人によって頭が痛くなったり胃が痛くなったり疲労感が強くなったりといったように、現れ方に違いがあります。 症状は2つに分けることができます。1つは「心身症」と呼ばれ、本態性高血圧や片頭痛、胃潰瘍、気管支喘息など元々あった体の病気が、ストレッサーによって発症したり悪化したりすることをいいます。もう1つは、体の病気はないけれどストレス反応によって起こる不調で、精神医学では「身体症状症」という病名がつけられています。 どちらも現れる症状に共通性がありますが、治療は異なります。心身症であれば、もともとの体の病気をしっかり治療し、なおかつストレスに強くなる=抗ストレス作用を強める治療をします。身体症状症に対しては、薬や自律訓練法という精神療法によってリラックス状態をつくり、自律神経のバランス回復を図る方法で治療します。治療薬として抗うつ薬を使う医師もいますが、漢方薬も昔からよく使われてきました。
◇精神と身体を同時に考えて治療する漢方
現在の日本で通常行われているのは、西洋医学に基づく診療がほとんどです。それとは別に、江戸時代前期まで日本で唯一の医療だった漢方(漢方医学)があります。西洋医学は精神と身体は別という心身二元論に立脚するのに対し、漢方は精神と身体は相互に関連しているものと捉えて心身全体の調和を図ることを治療の目的とし、これを心身一如(しんしんいちにょ)と称しています。 心身症がストレッサーによって悪化している場合、西洋医学だと体の病気だけを治療し、ストレッサーに対しては精神安定薬(向精神薬)で対応するといった考え方をします。これに対して漢方では精神と身体を同時に考えて治療します。 ストレス反応が起こりにくくなる「抗ストレス作用」のある生薬として桂枝(ケイシ)・桂皮(ケイヒ)、柴胡(サイコ)、酸棗仁(サンソウニン)、大棗(ナツメ)、杜仲(トチュウ)、人参(ニンジン)、半夏(ハンゲ)、白朮(ビャクジュツ)などが知られており、症状に応じてそれらを含むさまざまな漢方薬が治療に使われます。 ストレッサーは外からかかってくるものなので、厳密には女性の更年期にみられる不定愁訴と呼ばれる症状はストレス反応とはいえないのですが、ほとんどが自律神経症状でストレス反応に近いものと考えることができます。そうした症状にも漢方薬が有効な場合があります。