Amazon 、スマートカート導入拡大を試みるも「受け入れられない」食料品店
スマートカートを導入しているスーパーはわずか6%
2023年に6110億ドル(約94兆4000億円)の収益を報告したウォルマートのような業界大手にとっては、スマートカートの導入はたやすいことかもしれない。しかし、ローカルチェーンや独立系店舗など小規模な事業者は、このような技術への投資を難しいと考えるだろう。地域密着型スーパーマーケットチェーンのマイヤー(Meijer)の2023年の収益は、約200億ドル(約3兆900億円)だ。 スマートカートは、多くの場合カメラとセンサーを使用し、買い物客が商品をカートに入れるとすぐにスキャンして、レジ待ち列をスキップできるようにするもので、小さいながらも成長を続けている現代のスーパーマーケットの備品だ。2021年、サンフランシスコを拠点とするインスタカートは、スマートカートのスタートアップであるケイパーAI(Caper AI)を3億5000万ドル(約540億円)で買収し、それ以来、スーパーマーケットのクローガー、フェアウェイマーケット(Fairway Market)、ガイスラーズ(Geissler’s)、ショップライト(ShopRite)、シュナックス(Schnucks)など、さまざまな小売実店舗にカートを導入しており、2024年末には数千台に達する見込みだ。スーパーマーケットチェーンのアルバートソンズ(Albertson’s)は、2人の元Amazonエンジニアが設立したスタートアップのビーブ(Veeve)が提供するスマートカートを試験導入した。同じくスーパーマーケットチェーンのモートンウィリアムズ(Morton Williams)は昨年、イスラエルを拠点とするテクノロジー企業のA2Zスマートテクノロジーズ(A2Z Smart Technologies)に100台のカートを発注し、ウェグマンズ(Wegmans)も2店舗でスマートカートのテストを開始した。 食品小売業界誌のプログレッシブグローサー(Progressive Grocer)によると、食料品店におけるスマートカートの導入率は比較的低く、現在店舗に導入しているスーパーマーケットはわずか6%だ。Amazonのウェブサイトによると、同社のダッシュカートを試しているサードパーティ小売業者のテストプールは小さく、現在この技術を試験導入しているのはカンザス州とミズーリ州にある小売チェーンのプライスチョッパー(Price Chopper)とマッキーバーズマーケット(McKeever's Market)の5店舗だけだという。とはいえ、スマートカートが消費者に支持され得ることを示唆する調査もある。消費者調査プラットフォームのアッテスト(Attest)のデータによると、調査対象となった2000人のアメリカ人のうち、追加された商品を自動的に検出するスマートカートを使用したいと回答したのは41%で、使用したくないと回答したのはわずか21%だった。 問題の一部は費用にある。スマートカートの価格は1台あたり5000ドル(約77万円)から1万ドル(約154万円)だといわれている。コンサルティング会社のコンフルエンサーコマース(Confluencer Commerce)の創業者でCEOのブライアン・ギルデンバーグ氏は、標準的なカートの価格が1台あたりわずか100ドル(約1万5000円)程度であることを考えると、ほとんどの食料品店はこの価格に衝撃を受けるだろうと述べた。農産物や乾物を販売するビジネスは利益率が低く、センサーとカメラを搭載した未来的なカートは、多くの食料品店にとって手が届かない代物かもしれない。