埼玉の医師がスタートアップを起業 異色のキャリアに導いた「自分はできる」という思い込み
自尊心を捨てよ、自己効力感を持て
「やりたいとは思うけれど、自分にはできない気がする」という人には、自己効力感を持ってほしいとも思います。日々、もっというならば毎秒毎秒、自分はだめなやつだと思うのか、自分はできるやつだと思うか。そのどちらかで、思考そして行動は少しずつずれていくものではないでしょうか。 毎日取りにいく情報も変わってきます。行動はもちろんつき合う人も変わります。この世で一番いけないことは、自分で自分自身をだめだと思うことだと私は考えています。まず「自分は何かできる」と思うところから始めようではありませんか。 ただ、ここで私が誤解してほしくないのは、自己効力感は自尊心とは違う、という点です。 自尊心は「自分自身・自分という存在」に対して肯定的な考えを持っていることです。それを否定するわけではありませんが、自分のやっていることが正しいという考えには危険も伴います。 たとえば、試験でいい点が取れなかったとき、自尊心の強い人は「試験が適正でなかった」と考えてしまう恐れがあります。逆に、自己効力感の強い人なら、「自分はこの試験がクリアできるはずだからもう一度やってみよう」と発想します。 「やりたいとは思うけれど、もう遅い気がする」という人には、年齢を言い訳にする理由はまったくないと伝えたいと思います。 私と同じくらいの年の人でも、「もう50歳なので、新しいことは覚えられません」と言う人がたくさんいますが、そんなことはまったくありません。 人間はつねに成長できるんだ、何か変わっていけるんだ、自分自身は何かできるんだ、という考え─グロースマインドセットという考え方が好きです。グロースマインドセットを因数分解していくと、確信力になるのではないでしょうか。
思い込みから自由になる
「人生の99パーセントは思い込み」とも言われますが、「自分にはできない」「そんな能力はない」というのも、一つの思い込みです。 実はたまたまいた環境が悪かっただけかもしれません。自分自身にとって得意なことをやってこなかっただけかもしれません。 チャンスがめぐって来たらとか、自分に自由にできる資金があればとかいう「たられば」はいますぐやめてほしいと思います。そうではなく、自分が生きている証しとして、これを成し遂げたいから...という「○○だから」という発想に考えを切り替えてみてはいかがでしょうか。 2023年に日本消化器内視鏡学会総会で行われた特別講演で、元プロ野球選手で前人未到の三冠王を3回とった落合博満さんの話を聞く機会がありました。テーマは「技を極めるために」です。 落合さんがお話しされたのは、練習することがすべて。練習はうそをつかない。練習できない人は、つらいと思うから練習できない。プロ野球の試合にレギュラーで出続けるために、最低限必要なことをやっているんだと思えば、全然つらいと思わないはずだ。そういった話でした。 ただ、勉強すれば勉強するほど悲しくなることもあります。自分たちが一番だと思っていたのにもっと優れた相手がいるとか、自分たちのしてきたことが間違っていたと悟ることもあるでしょう。「知らなきゃよかった」ということも多いかもしれません。でもそれは逆に、自分の思い込みからより自由な世界に移動できたということでもあります。