浦和の”逸材”18歳GK鈴木彩艶が世代交代の歴史動かす
だからこそ、仙台戦の先発メンバーは大きな驚きとともに受け止められた。今シーズンから浦和を率いるスペイン出身のリカルド・ロドリゲス監督は彩艶をデビューさせた理由を問われると、まず6月に35歳になるベテランの西川に言及している。 「前節で少しミスはあったものの、これまでが悪かったというわけではない。例えば(前々節の)大分戦ではチームを救い、勝ち点3を取るためのビッグセーブをしてくれた」 4月18日のセレッソ大阪戦で、GKに限ればともに引退した楢崎正剛(631試合)、曽ヶ端準(533試合)に次ぐJ1通算500試合出場を、フィールドプレーヤーを含めて史上最年少で達成した西川へ敬意を表しながら、指揮官はこう言葉を紡いでいる。 「ここまでの練習やルヴァンカップでのプレーを見たなかで、彩艶がすごくいいプレーをしていた。彼のパフォーマンスを評価して起用に踏み切った。彼はまだ若いが落ち着きを持って、しっかりとプレーしていた。すごくいいデビューになったと思う」 フィールドプレーヤーと異なり、ポジションがひとつしかないゴールキーパーをシーズン途中で代える理由は限られている。けがなどで戦列を離れた場合かキーパー自身が極度の不振に陥った場合、あるいはチームの嫌な流れを変えたい場合となる。 西川の交代は最後の「嫌な流れを断ち切る」となる。仙台戦を前にした時点で浦和は5勝2分け5敗。アビスパ福岡に敗れた1日の前節では一度はクロスをキャッチしながら味方と交錯し、西川がこぼしたボールを相手選手に押し込まれて先制されていた。 今シーズンにユースから昇格した彩艶を、指揮官はYBCルヴァンカップのグループリーグですべて先発させてきた。公式戦の経験を積ませながらリーグ戦でも西川のリザーブとしてベンチ入りさせてきたなかで、機は熟したと判断したのだろう。 リザーブに回った西川も、試合前のアップ時や前後半の飲水タイムで彩艶へ何度も声をかけた。尊敬する西川へ「ポジティブな声がけが多く、戦術的に自分が見えていなかった部分を的確に伝えてくれました」と感謝した彩艶は、元日本代表スタッフの浜野征哉コーチや39歳の第3キーパー塩田仁史と切磋琢磨する日々をこう振り返った。 「練習のなかで自分から聞くこともありますし、周りから教えてくださることもいろいろとある。キーパーがひとつのチームとなって、常に高みを目指してやっているので、今日の勝利はキーパー全員の勝利だと自分では思っています」 後半41分にはFWマルティノスが放った強烈なミドルシュートを、横っ飛びしながら長い右腕を必死に伸ばしてセーブ。ガーナ人の父と日本人の母から授かった、高い身体能力を生かした豪快なプレーでも魅せた彩艶は反省点をあげることも忘れなかった。 「コーナーキックで危ないシーンがあったので、まだまだ課題だと感じました。そういった点を、これからもトレーニングで突き詰めてやっていきたい」 0-0で迎えた後半6分。MF松下佳貴がインスイングで放った右コーナーキックに飛び出せず、DF吉野恭平にフリーでヘディングを許した。幸いにもシュートは外れたが、クロスへの積極的なアタックは浜野コーチから常に要求されるテーマだった。