「高大連携」が年内入試につながる 連携大学が多い私立高校は「塾いらず」と専門家
高大連携が年内入試に影響
一方、大学側には受験生を獲得したいという思惑もあります。 最近の流れとして、とりわけ高大連携に力を入れているのが、年内入試での受験生獲得を推し進める中堅私立大学や地方国公立大学です。早い段階から大学のことを認知してもらうことで、優秀な学生の獲得に結びつけられる可能性があります。将来的に自分の大学で学んでもらうために、学問に興味を持つきっかけをつくるのも目的の一つです。また、高校教育をサポートすることで、その地域の地域貢献や大学の意義を向上させる利点もあります。 こうした高大連携プログラムを実施することによって、年内入試で結果を出している高校の事例をいくつか紹介します。 最近、注目されているのは、医学部や医療・看護系学科を持つ大学と高校との高大連携です。たとえば、東京医科大学が吉祥女子(東京)や巣鴨(東京)と、順天堂大学が昭和女子大学附昭和(東京)と連携しています。 難関大や理系学部を持つ大学との連携も進んでいます。法政大学は三輪田学園(東京)、山脇学園(東京)、工学院大学附(東京)と連携しています。芝浦工業大学と佐藤栄学園(埼玉)との連携は、同大学が高校生に講座を実施することにとどまらず、独自の推薦制度も設けられています。
「塾いらず」と呼ばれる高校も
協定大学の数で群を抜くのが、神田女学園(東京)です。同校では、校長が自ら全国の大学を巡り、年内入試の志望理由書や面接で強みを発揮できる多数の高大連携プロジェクトを実現しています。それも、中央大学理工学部、神田外語大学、三条市立大学、北海道医療大学、福岡工業大学など全国69(2024年10月現在)の名だたる大学名が並び、首都圏の100塾へのアンケートでも、61%の塾が同校を「年内入試において、塾いらずの高校」として注目していることがわかりました。 同校の高大連携の取り組みのひとつが、「NCLプロジェクト」という探究活動です。中学1年次から自分の興味のあることを調べ、研究結果をプレゼンする取り組みを繰り返しますが、生徒たちが研究するテーマは、「時代と共に変化するオタクとオタ活のあり方」「ディズニープリンセスに見る女性の地位向上の変遷」「小児患者に対する音楽療法の可能性」など多種多様です。 また研究の成果を発表する「NCL AWARDS」では、昨年は39の協定大学が参加して審査しました。各大学は、入試におけるレポートの評価基準などを用いて生徒の論文を審査し、優秀な論文には、「〇〇大学賞」などの賞も与えられます。 探究活動の研究過程では、協定校の大学教員と生徒をZoomでつなぎ、アドバイスをもらうこともあるようです。学業では同級生に引けをとっている生徒が、探究で賞をもらって自信をつけることもあります。大学の学部を決めるきっかけになったり、そのまま入試における志望理由書やレポートに生かしたりする生徒もいます。 大学入試の総合型選抜や学校推薦型選抜では、学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度)を重視する多面的な評価軸で高校までの「体験」が問われます。そこでは、その人らしい学習動機や成果が重視されます。高大連携の取り組みは、入試につながるステップとして今後も大きな意味を持つはずです。
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