「高大連携」が年内入試につながる 連携大学が多い私立高校は「塾いらず」と専門家
総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」に比重を置く大学が年々増加しています。私立大学を中心に、年内入試によって、受験生を早期に獲得したいという大学側の狙いもあるようです。一方、高校と大学との連携が広がり、年内入試への足がかりになる事例も増えています。「高大連携」は入試にどう影響を及ぼすのでしょうか。追手門学院大学客員教授で学習塾業界誌「ルートマップマガジン」の西田浩史編集長が解説します。(写真=亀田医療大学での宿泊学習に参加する高校生〈希望者のみ〉、神田女学園提供) 【アンケート結果】高大連携、反応は?全国300塾に聞きました
年内入試につながる、高大連携
昨今、「高大連携」という言葉が活発に使われるようになりました。これは文部科学省が推進している取り組みで、高校生に大学レベルの教育研究に触れる機会を提供するものです。これまでは隔たりがあった高校と大学との接続を柔軟に捉えることで、生徒一人ひとりの能力を伸ばすための教育のあり方として浸透してきています。 高大連携の取り組みとして一般的なのは、高校生が大学の講義を受けたり、大学の教員が高校に出張授業に出向いたりするスタイルです。ユニークなものとして、例えば慶應義塾大学先端生命科学研究所が2009年から実施しているのは、近隣の高校の生徒を「研究助手」として任用するプログラムです。研究助手は毎日、放課後に所属プロジェクトの担当業務を行い、対価として時給も支払われます。 筆者が全国の300塾に聞き取り調査を行ったところ、「高大連携に注目している」という回答は62%でした。その理由については、「高大連携によって年内入試につながる指導がしやすくなる」が70%でした。なかには「中学生や高校生の生徒が受験校を決める際に、連携している大学のラインアップを見てアドバイスしている」という塾関係者もいました。 なぜ高大連携が年内入試に役立つのでしょうか。 総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内入試は、学びへの意欲や大学で何をやりたいかなどが重視される入試方式です。多くの大学で、志望理由書のほか、小論文や面接、グループディスカッションやプレゼンテーションなどで合否を判定します。 高校生の段階で大学の学びに触れることは、研究の面白さを知って将来の視野を広げたり、やりたいことを見つけたりできる可能性が広がります。また、授業を通じてレポートを作成したり発表したりすることで、小論文やプレゼンテーションの力を伸ばすことも期待されます。早い段階から生徒の大学入試に対する目的意識を高めることにもつながると考えられます。