親は子に、上司は部下に絶対してはいけない“否定“。相手の本能に届き信頼関係を築ける簡単でポジティブな言葉を
自分を守るための言動をしない
しかし、そういう局面になると、つい口を突いて出てしまうのが否定語というものです。 これは自己保存の本能が人間にあるからです。自分を守るために自分の窮状を訴えるのですが、これは難しいこと考えたくないというのとよく似ています。 悪事を働いた人が詭弁を弄してでもなんとか逃れようとするのも、自己保存の本能によるものです。昨今の国会議員の言動などを見ていても、それがよくわかります。 とにかく逃れようとする立場で動いているので、知っていても知らない顔をして「全くわかりません」「聞いたこともありません」と、しらを切っています。これは自己保存の本能の働きによるものです。 潜在能力を発揮できる本当に凄い人は、自己保存の本能を乗り越えてしまいます。逆に言うと、本能に逆らうことができなければ潜在能力は発揮できないのです。 人間は自己保存の本能が働いて難しいことを考えたくないのです。だから、目標を小さくして自分を守ろうとします。しかし、それでは大きな潜在能力は発揮できません。
世の中で大成功を遂げている人の共通点
潜在能力とはいざとなったら出てくる能力で、意識的につくり出せるようなものではないと普通の人は考えます。しかし、世の中で大成功を遂げているような人は、どうやって自己保存の本能を外して潜在能力を引き出そうかと考えています。 潜在能力という言葉はそれ自体が非常に魅惑的な言葉で、できる人はそれについて深く考えているけれど、できない人は全く考えていないのです。 そして、できる人は潜在能力について奥深いところまで考えているため、いざというときでなくても意識的に自己保存の本能を外して桁違いの潜在能力を発揮することができるようになるわけです。 先に潜在能力から運が生まれると言いました。「生まれる」という言い方は軽すぎるかもしれません。運が良いとか悪いというのはどうしてなのか。 いろいろな人がその理由を述べています。しかし、それらの大半は体験に基づくもので普遍的とは言えないように思います。中にはこじつけと言ってもいいような理由も混じっています。 では、運を引き出す原理とはなんでしょうか。それは潜在能力を鍛えて開花させることです。運の原点に、潜在能力があるのです。それを鍛えていつでも発揮できるようにすれば、誰でも運を引き寄せることができるようになるのです。 林成之 日本大学名誉教授。脳科学をスポーツに応用し、北京オリンピック競泳日本代表の北島康介選手らの金メダル獲得に貢献。脳低温療法を開発し国際学会の会長も務めるなど、脳蘇生治療の第一人者としても知られる。著書に『<勝負脳>の鍛え方』(講談社現代新書)、『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎)などがある。
林成之