「ギリギリ真実を書けるのはもう漫画しかない」…「児童養護施設」のリアルを描いた漫画が訴えること
「よそ行きの状態の子どもの現状を聞いて『とりあえず見守りで大丈夫です』で終わりに…」
第1話では、子どもの食事として、コンビニ弁当のフタにニンジンが置かれて提供されるシーンが登場する。弁当のフタを皿がわりにしているのが、なんともリアルな光景だが……。 「これは監修をしてくださっている専門家のご指摘で、締切り直前にうえの先生に描き直してもらいました。私は児童養護施設の取材はできても、虐待が起きている家庭を見る機会はありません。ですから、あらゆる方から話を聞いています。 児童虐待を専門に担当してきた元警察官にも、取材をしています。でも実は、警察官も虐待の現場はそれほど見ていません。彼らが立ち会うのはおもに事件現場であって、虐待事案の立ち入り要請は非常に少ないのです。 結局、児童相談所も警察も、誰の通報を一番信用するかというと、医師なんですね。でも、そうなったときに、全国各地で専門家である児童精神科医が圧倒的に足りていません。北九州市も政令指定都市でありながら、常勤の児童精神科医は一人もいないのです。少子化対策を語るなら、児童精神科医の確保や育成が急務です。 一般人から通報があれば、児相も警察も安全確認を行う義務があります。児相の一時保護は、法律上は子どもや親の同意がなくてもできますが、原則として、子どもや親の意向を確認することになっています。 ここに大きな問題があって、親はもちろん、子ども自身も虐待を認めるとは限らないんですね。そうすると児相側も、強引に一時保護はできないのが現実です。ですから、虐待が起きているのに『とりあえず見守りで』となっているケースは、実はものすごくたくさんあるのではないかと感じています」 ◆「『親や本人の意思を尊重する』という綺麗な言葉で、そのまま追い払ってしまう」 また、本作の序盤では、子どもが親の性交渉を目撃するという衝撃的エピソードも描かれる。 「私は『精神障害者移送サービス』を通じてたくさんの患者さんと接する中で、性の問題と心の問題は密接に関係していると考えるようになりました。『「子供を殺してください」という親たち』でも、性の問題は繰り返し描いています。 それが今回、児童養護施設の取材を進める中で、その原点が『子ども時代』にあることが分かりました。例えば、幼少期に親の性交渉を見せられた子どもは、早くから自慰行為をするようになるという話など、『保育や児童学の分野では、当たり前の常識だ』とはっきり言われて、驚くと同時に、そうだよなという思いもありました。 また、地位や名誉もある、学歴もある、守るべきものもあるはずの大人が、なぜ性的に逸脱してしまうのか。その答えも見えてきそうです」