「父の所有地」に自宅を建てた長男…父亡きあとに陥る〈悲劇〉を回避するには【行政書士が解説】
自分亡きあと、子どもたちが遺産分割で揉めることを憂慮する60代男性。自身の所有地には長男一家が家を建てて暮らしていますが、自分が亡くなれば、長男一家の敷地も遺産分割の対象となります。最悪の場合、長男がマイホームを追われる可能性も…。長男一家の敷地となっている土地を、確実に長男へ遺すには? 行政書士・平田康人氏が回答します。
このままでは確実に揉める「不仲きょうだい」の相続
--------------------------------------------------- 【相談】 「そろそろ終活をしなければ」と考えています。妻は6年前に他界し、私は60代半ばになりました。子どもは3人(長男、二男、長女)いて、それぞれ家庭を築いています。二男と長女は遠方で暮らしていますが、長男一家は実家の近くに住む形で、私の所有地に家を建てました。 現在の悩みの種は、子どもたちが不仲であるということです。もし相続が発生すると、遺産分割協議で揉めることは容易に想像できます。長男も、自分の家の敷地は将来どうなってしまうのかと心配のようです。生前にどのような対策が必要でしょうか? --------------------------------------------------- 《回答》「特定財産承継遺言」を作成しておく 長男が家の敷地とする土地を長男に遺すには、父が生前に「特定財産承継遺言」を作成しておきましょう。 相続は、人が亡くなると自動的に開始されます。遺言書がない場合、遺産分割が終わるまでは、それぞれの財産が誰のものになるのか確定せず、相続財産は相続人全員の共有となります。この遺産の共有状態を「共同相続」といいます。 共有となるといろいろ制約もあるので、この共同相続状態を解消し、各財産を単独所有にするために遺産分割協議(話し合い)を行う必要がありますが、協議には共同相続人全員が参加して、納得する内容でなければ合意できず、共同相続状態を解消することはできません。 協議がまとまらなければ調停、調停でも合意できなければ審判と進み、時間と費用をかけた結果、法定相続分による共有分割となります。遺産分割審判では、法定相続分に従って分割されるためです。 本件相談でいえば、仲の悪い子ども3人の話し合いがまとまらない結果、長男の家の敷地は、子ども3人が各1/3ずつ共有することになります。そうなると、共有持分を有する二男や長女が敷地全体を使用する長男に対して、持分に応じた賃料相当分の支払いを請求したり、二男や長女が自分の共有持分を第三者に売却して、第三者から共有物分割訴訟を提起され立ち退きを余儀なくされたりなども考えられます。 以上は、すべて遺言書がないことで起こるものです。ですから、これらを解決する不動産対策として、生前に「特定財産承継遺言」を作成しておく方法があります。