この地球最大の謎「生命は、どうやって生じた」のか…じつに、40億年もの生物進化から見えてきた「意外すぎる盲点」
進化とは、一直線に進んでいくものではない
進化というと、まず脊椎動物が進んだ動物たちとされ、そのなかで、魚類→両生類→爬虫類→鳥類→哺乳類と、直線的に進化をとげてきたと考えられがちです。でもこれは明らかに間違いですよね。哺乳類は鳥類から進化したはずはないのですから。 中生代は爬虫類の天下で、新生代は哺乳類の時代でしたが、哺乳類が爬虫類より優れているとはいえない面もあります。たとえば、陸上生活にどちらがよく適応しているかを考えると、体内の不要な窒素を、大量の水を使って尿素として排出しなくてはならない哺乳類よりも、水なしで尿酸として排出できる爬虫類や鳥類のほうが優れていますし、肺のしくみは哺乳類よりも鳥類のほうが、地上のいろいろな環境で生きていくうえでは便利そうです。 直近の霊長類からの進化も同様です。 ヒトはチンパンジーから進化したわけではなく、両者の共通の祖先から、チンパンジー(およびボノボ)とヒトに分かれました。ネアンデルタール人が進化して現生人類(ホモ・サピエンス)になったのではなく、両者は共通の祖先から分かれて共存していたのが、4万年前にネアンデルタール人が絶滅してしまい、結果的に現生人類のみになったとされています。 しかし私たちのDNAの中にはネアンデルタール人由来のものが1~4%含まれていることがわかり、この業績でスウェーデンの遺伝学者(ドイツ在住)のスバンテ・ペーボ(1955~)は2022年度のノーベル医学生理学賞を受賞しました。 生き延びたわれわれ現生人類のほうが、絶滅したネアンデルタール人よりも優れていると考えられがちです。しかし、実際にはどうだったかは断定できないでしょう。脳の大きさはネアンデルタール人のほうが大きかった、ともいわれています。 このように進化とは決して、適者生存の原理にのっとった、より複雑で優れたものに一直線に進んでいくものではないのです。そして、この「進化は、一直線には進まない、立体的で複雑なものだ」という考えが、化学進化に大きなヒントになりそうです。 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか 生命はどこから生命なのか? 非生命と何が違うのか? 生命科学究極のテーマに、アストロバイオロジーの先駆者が迫る!
小林 憲正
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